白内障の進行を遅らせるには?食事や紫外線など予防策を解説

白内障は予防できる?原因と白内障になりやすい人の特徴・予防法も紹介

白内障は、年齢を重ねるごとに誰もが経験しうる目の病気です。目のレンズにあたる水晶体が濁ることで、視界がかすんだり、まぶしさを感じやすくなったりします。しかし、この病気の進行は、日々の生活習慣を少し見直すだけで遅らせることが可能です。本記事では、白内障の基本的な知識から、食事や紫外線対策といった具体的な予防策、さらには医療機関との適切な付き合い方までを網羅的に解説しています。大切な目の健康を守り、より長くクリアな視界を保つために、今日からできることを一緒に見つけていきましょう。

目次

はじめに|白内障の進行は遅らせることが可能

白内障とは

年齢とともに視界がぼやけたり、光がまぶしく感じたりすることはありませんか? それはもしかしたら「白内障」のサインかもしれません。白内障は、加齢とともに多くの人が経験する目の病気であり、80歳以上になるとほとんどの方が何らかの形で水晶体の濁りを持つと言われています。しかし、この病気は必ずしも進行を早める必要はありません。適切な知識と日々の工夫によって、その進行を遅らせることが十分に可能です。

本記事では、白内障がどのような病気であるかを正しく理解した上で、日常生活にすぐに取り入れられる具体的な予防策をご紹介します。例えば、食生活の改善や効果的な紫外線対策、さらには生活習慣病の適切な管理などが、大切な目の健康を守る鍵となります。

白内障とは?症状と原因を正しく理解しよう

白内障の原因

白内障の進行を遅らせるためには、まず、この病気がどのようなものなのか、どのような症状が現れるのか、そして何が原因で起こるのかを正しく理解することが大切です。これから、白内障のメカニズムから、日々の生活で気づけるセルフチェック項目、そして主な原因までを具体的に解説していきます。

水晶体が濁って視力が低下する病気

私たちの目にはカメラのレンズのような役割を果たす「水晶体(すいしょうたい)」という透明な器官があります。この水晶体が、主にタンパク質の変性によって白く濁ってしまう病気が白内障です。通常、透明な水晶体は光を透過させ、網膜というスクリーンに像を結ばせることで物が見えます。

しかし、白内障になると水晶体が濁るため、光が網膜まで十分に届かなくなったり、乱反射したりします。この状態は、まるでカメラのレンズが曇ってしまったり、すりガラスを通して物を見たりしているようなものです。その結果、物がかすんで見えたり、視力が低下したりといった症状が現れてしまいます。

白内障による視力低下は、初期の段階ではほとんど自覚がないこともありますが、進行するにつれて日常生活に支障をきたすほどになります。

こんな症状は白内障かも?自分でできるセルフチェック

白内障の症状はゆっくりと進行することが多いため、初期には自覚しにくいことがあります。しかし、以下のような変化を感じ始めたら、白内障のサインかもしれません。ご自身の目の状態と照らし合わせてセルフチェックしてみましょう。

  • 視界が全体的にかすむ、ぼやける:霧がかかったように感じたり、細かい字が見えにくくなったりします。
  • 光がまぶしく感じる(羞明):太陽の光や車のヘッドライトなどが異常にまぶしく感じ、目の痛みや不快感を伴うことがあります。
  • 暗い場所で見えにくい、夜盲:特に夜間の運転時や暗い場所での視認性が低下します。
  • 物が二重、三重に見える(単眼性複視):片目で見ても物が複数に見えることがあります。これは水晶体の濁り方が不均一な場合に起こりやすい症状です。
  • 色がくすんで見える、黄ばんで見える:鮮やかさが失われ、全体的に黄色みがかったり、色合いが薄く感じられたりします。
  • 眼鏡やコンタクトレンズの度数が合わなくなる:頻繁に度数を変えても視界がすっきりしないと感じる場合があります。

これらの症状は、白内障以外の目の病気でも起こりうるため、あくまで目安です。気になる症状があれば、早めに眼科を受診して専門医の診断を受けることが大切です。

白内障の主な原因|加齢、紫外線、生活習慣病

白内障の発症にはさまざまな要因が関わっていますが、最も多いのは加齢に伴うものです。しかし、それ以外にも、日々の生活の中に潜むさまざまなリスク要因が存在します。これから、加齢をはじめ、紫外線、生活習慣病、そしてその他複数の要因がどのように白内障を引き起こし、進行させるのかを多角的に見ていきましょう。

加齢

白内障の最大の原因は「加齢」です。私たちは年齢を重ねるにつれて、全身の細胞や組織が少しずつ変化していきますが、目の水晶体も例外ではありません。水晶体の主成分であるタンパク質は、長年にわたり紫外線や体内で発生する活性酸素にさらされることで、徐々に変性し、白く濁っていきます。この現象は「酸化ストレス」と呼ばれ、自然な老化現象の一部と考えられています。

この加齢に伴う変化は誰にでも起こり、個人差はありますが、一般的に40代から始まり、年齢を重ねるごとに発症率が高まります。特に、80代になるとほぼ100%の人に何らかの白内障が見られるというデータもあり、白内障は加齢とともに誰もが経験しうる、非常に身近な目の病気と言えるでしょう。

紫外線

紫外線、特にUV-AやUV-Bは、白内障のリスクを高める重要な要因の一つです。目が紫外線を浴びると、水晶体内で活性酸素が大量に発生します。この活性酸素が水晶体のタンパク質を酸化させ、変性させることで、水晶体の濁りを早めてしまうのです。これが、前述の「酸化ストレス」として、水晶体にダメージを与えるメカニズムです。

屋外での活動が多い人や、若い頃から強い紫外線を継続的に浴びてきた人は、そうでない人に比べて白内障を発症するリスクが高いと考えられています。日常的に浴びる紫外線の影響は蓄積されていくため、目の健康を守るためには、若い頃からの紫外線対策が非常に重要になります。

生活習慣病(糖尿病など)

糖尿病をはじめとする生活習慣病も、白内障の発症や進行に深く関わっています。特に糖尿病の場合、高血糖状態が長く続くことで、水晶体内に「ソルビトール」という物質が過剰に蓄積されます。このソルビトールは水晶体内の浸透圧を変化させ、水晶体が水分を過剰に吸収してしまうことで、濁りを引き起こします。この一連のプロセスは「糖化ストレス」と呼ばれ、水晶体を構成するタンパク質の変性を促します。

糖尿病を患っている方は、そうでない方に比べて白内障を発症するリスクが約5倍も高いと言われています。若年層であっても、糖尿病が原因で白内障(糖尿病白内障)を発症することがあり、進行も早い傾向にあります。そのため、血糖値の適切なコントロールは、白内障予防において非常に重要な対策の一つとなります。

その他(喫煙・ステロイド薬・目の外傷など)

加齢や紫外線、糖尿病以外にも、白内障のリスクを高めるさまざまな要因があります。まず「喫煙」は、体内の酸化ストレスを増大させ、水晶体に直接的なダメージを与えることが知られています。喫煙者は非喫煙者に比べて白内障のリスクが2〜3倍高まるという研究結果もあります。

また、アトピー性皮膚炎の合併症として若年性白内障が見られることや、「ステロイド薬」の長期使用も白内障を引き起こす可能性があります。特に点眼薬や内服薬としてステロイドを長期間使用している場合は、定期的な眼科検診が推奨されます。

さらに、目の打撲や外傷、他の目の病気(ぶどう膜炎など)なども、白内障の原因となることがあります。これらは「外傷性白内障」や「併発白内障」と呼ばれ、水晶体が物理的なダメージを受けたり、炎症によって変性したりすることで発症します。これらの多岐にわたる原因を理解し、それぞれに応じた対策を講じることが、白内障の進行を遅らせる上で重要です。

白内障の進行を遅らせるために日常生活でできる5つの予防策

白内障の予防方法

白内障の原因は一つではなく多岐にわたるため、その進行を遅らせるためには、日々の生活の中で多角的に対策を講じることが非常に大切です。ご自身の目の健康を長く維持するためには、できることから少しずつでも予防策を取り入れていくことが、明るい視界を守るための鍵となります。このセクションでは、皆さんが今日からでも日常生活にすぐに取り入れられる、具体的な5つの予防策をご紹介していきます。

1. 紫外線対策を徹底する

白内障の予防において、最も手軽で効果的な対策の一つが紫外線対策です。目の水晶体は、紫外線を浴び続けることで酸化ストレスを受け、タンパク質が変性して濁りやすくなります。特に、若い頃から紫外線を浴びる機会が多かった方は、そのダメージが蓄積し、年齢を重ねてから白内障のリスクが高まることが知られています。物理的に紫外線を遮断することは、このダメージから目を守り、白内障の進行を遅らせるために非常に有効な手段となります。

サングラスや帽子の活用

紫外線から目を守るためには、サングラスや帽子の活用が非常に効果的です。サングラスを選ぶ際は、UVカット率が99%以上、または「UV400」と表示されているものを選ぶようにしましょう。レンズの色が濃い方がUVカット効果が高いと思われがちですが、実際には色の濃さとUVカット性能は直接関係ありません。むしろ、レンズの色が濃すぎると瞳孔が開いてしまい、レンズの隙間から入る紫外線の量が増えてしまう可能性もありますので、注意が必要です。

さらに、つばの広い帽子や日傘を併用することで、サングラスだけでは防ぎきれない、上方や側面から差し込む紫外線を効果的に遮断できます。夏場だけでなく、曇りの日や冬場でも紫外線は降り注いでいますので、年間を通して継続的に対策を行うことが、大切な目の健康を守るために不可欠です。

2. 食生活を見直す|抗酸化作用で酸化ストレスを軽減

私たちの食生活は、目の健康、特に白内障の予防に深く関わっています。白内障の主な原因の一つである「酸化ストレス」に対抗するためには、「抗酸化作用」を持つ栄養素を積極的に摂取することが重要です。体内で発生する活性酸素は、水晶体のタンパク質を傷つけ、濁りの原因となることがあります。

抗酸化作用のある食品を日々の食事に取り入れることで、この活性酸素の働きを抑制し、水晶体がダメージを受けるのを防ぐことができます。バランスの取れた食生活は、白内障の進行を遅らせるだけでなく、全身の健康維持にも繋がります。

白内障予防に効果的な栄養素と食品(ルテイン、ビタミンC・Eなど)

白内障の予防に特に効果が期待される栄養素として、まずは「ルテイン」と「ゼアキサンチン」が挙げられます。これらは目の黄斑部や水晶体に存在する色素で、強力な抗酸化作用を持ち、有害な光から目を保護する役割を担っています。これらの栄養素は、ほうれん草、ケール、ブロッコリーなどの緑黄色野菜に豊富に含まれています。

また、「ビタミンC」も強力な抗酸化作用を持ち、水晶体を酸化ダメージから守ります。柑橘類、パプリカ、ブロッコリーなどに多く含まれます。「ビタミンE」も同様に抗酸化作用が高く、ナッツ類、アボカド、植物油などから摂取できます。さらに、亜鉛やセレンといったミネラルも抗酸化酵素の働きを助けるため、牡蠣やレバー、ナッツ類などをバランス良く取り入れることが推奨されます。

これらの栄養素を特定のサプリメントだけで補うのではなく、日々の食事から彩り豊かに摂取することを心がけましょう。バランスの取れた食生活は、白内障の進行を遅らせるだけでなく、全身の健康維持にも繋がります。

糖分の摂りすぎ(糖化ストレス)にも注意

白内障のリスクを高める要因として、糖尿病だけでなく、日常的な糖分の過剰摂取による「糖化ストレス」も無視できません。体内の余分な糖分がタンパク質と結びつくと、「AGEs(最終糖化産物)」と呼ばれる老化物質が生成されます。このAGEsが水晶体のタンパク質を変性させ、透明性を損なわせることで、白内障を引き起こしたり進行を早めたりすることがわかっています。

血糖値が高い状態が長く続くほど、この糖化ストレスは加速します。そのため、糖尿病と診断されていない方でも、甘いものや炭水化物の多い食生活を続けている場合は注意が必要です。糖質の摂取量を見直し、バランスの取れた食事を心がけることは、白内障予防だけでなく、全身の健康を守るためにも大切な対策となります。

3. 禁煙を心がける

喫煙は、白内障の発生リスクを大幅に高める強力な要因であることが、多くの研究で明らかにされています。たばこの煙には、体内で大量の活性酸素を発生させる有害物質が豊富に含まれており、これが目の水晶体を含む全身の細胞に酸化ストレスを与えます。結果として、水晶体のタンパク質が変性しやすくなり、白内障の進行を早めてしまうのです。

さらに、喫煙は体内のビタミンCを破壊・消費してしまうため、水晶体を酸化ダメージから守る防御力が低下するという二重の悪影響をもたらします。実際に、喫煙者は非喫煙者に比べて白内障のリスクが2〜3倍高いというデータもあります。ご自身の目の健康、そして全身の健康のためにも、禁煙は白内障予防の最も重要なステップの一つとして、強くおすすめします。

4. 糖尿病など生活習慣病の予防・管理

糖尿病をはじめとする生活習慣病の予防と適切な管理は、白内障の進行を遅らせる上で極めて重要です。特に糖尿病の場合、血糖値が高い状態が続くと、水晶体内にソルビトールという物質が蓄積し、水晶体の浸透圧バランスが崩れて濁りやすくなります。これを「糖尿病白内障」と呼び、進行が早いという特徴があります。

そのため、血糖値を安定させることは、糖化ストレスを抑制し、白内障の発生や進行を防ぐ上で不可欠です。また、高血圧や脂質異常症といった他の生活習慣病も、目の血流を悪化させ、水晶体への栄養供給に影響を及ぼす可能性があります。かかりつけ医と連携し、全身の健康管理を徹底することは、目の健康を長期にわたって守ることに繋がります。

適度な運動を習慣にする

生活習慣病の予防・管理の一環として、適度な運動を習慣にすることは、白内障予防にも良い影響をもたらします。ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動は、全身の血行を促進し、目の毛細血管にも新鮮な血液と栄養を届けやすくします。これにより、水晶体の健康維持に必要な代謝活動が活発になることが期待できます。

また、運動は血糖値や血圧を安定させる効果もあるため、糖尿病や高血圧といった白内障のリスク因子を間接的に低減させることにも繋がります。さらに、適度な運動は肥満の解消にも役立ち、結果として全身の酸化ストレスを軽減する効果も期待できるでしょう。無理なく続けられる範囲で、日々の生活に運動を取り入れてみてください。

5. 目の疲れを溜めない生活を送る

スマートフォンやパソコンの長時間使用による目の疲れ、いわゆる眼精疲労と白内障リスクの直接的な関連については、まだ研究途上の部分もあります。しかし、ブルーライトのような強い光が目の奥に届き、目の細胞に酸化ストレスを与える可能性が指摘されています。予防的な観点から、日頃から目の疲れを溜めない生活習慣を心がけることは、目の健康を維持するために大切です。

目の疲れを和らげる具体的な方法としては、デジタルデバイスを使用する際に「20-20-20ルール」を実践することがおすすめです。これは、20分ごとに20フィート(約6メートル)先の景色を20秒間見るというもので、目の緊張をほぐすのに役立ちます。また、意識的にまばたきの回数を増やして目を潤したり、部屋の照明を調整してモニターとの輝度差を減らしたりすることも有効です。

さらに、十分な睡眠をとることや、温かいタオルで目元を温めるなど、目の周りの血行を良くするケアも効果的です。日々の生活の中で目の疲れを意識的にケアすることで、長期的な目の健康を守り、白内障のリスクを少しでも減らすことに繋がると考えられます。

薬(点眼薬)で白内障の進行は止められる?

白内障は手術しないで自分で治せる?

白内障と診断された際に、眼科で点眼薬を処方されることがあります。しかし、「点眼薬で白内障が本当に治るのか、手術は避けられるのか」と疑問に感じる方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、白内障の点眼薬がどのような役割を持ち、どこまで効果が期待できるのかを詳しくご説明します。点眼薬の目的と限界を正しく理解し、治療法としての手術との違いを明確にしていきましょう。

点眼薬の目的は進行抑制であり、改善・治療はできない

白内障と診断された際に処方される点眼薬には、ピレノキシン製剤やグルタチオン製剤などがあります。これらの点眼薬の主な目的は、白内障の進行を「抑制」または「遅延」させることです。具体的には、水晶体のタンパク質が変性して濁るのを阻害したり、水晶体内の酸化ストレスを軽減して濁りの進行を緩やかにしたりする作用が期待されています。

しかし、非常に重要な点として、一度濁ってしまった水晶体を点眼薬で透明に戻すことはできません。つまり、点眼薬は白内障を根本的に「治療」したり、「治癒」させたりするものではないのです。白内障が進行して視力低下が進んだ場合や、日常生活に支障をきたすようになった場合の唯一の根本的な治療法は、濁った水晶体を取り除き、人工の眼内レンズに置き換える手術となります。

点眼薬は、あくまで白内障の進行を穏やかにし、手術を必要とする時期をできるだけ遅らせるための補助的な役割を担うものと理解しておくことが大切です。医師と相談し、自身の白内障の進行度合いや症状に応じて、点眼薬の継続や手術のタイミングを検討していくことになります。

白内障の進行が気になったら|治療と手術のタイミング

白内障になりやすい人・なりにくい人

これまで白内障の進行を遅らせるための生活習慣についてお話ししてきましたが、残念ながら予防策を講じても症状が進んでしまうケースもあります。もし「最近見えづらいな」と感じることが増え、日常生活に支障が出始めたら、専門家である眼科医との連携が非常に重要になります。

このセクションでは、白内障の症状が進行したときに、どのような医療的な選択肢があるのか、いつ手術を考えるべきなのか、そして治療後の生活について具体的に解説していきます。

定期的な眼科検診が早期発見の鍵

白内障の進行を早期に発見し、適切な管理を行う上で最も重要なのが、定期的な眼科検診です。特に40歳を過ぎたら、自覚症状がなくても年に一度は眼科を受診することをおすすめします。白内障は初期のうちは自覚症状がほとんどないことも多く、気づかないうちに進行している場合があります。

眼科での検診では、視力検査はもちろんのこと、「細隙灯顕微鏡検査(さいげきとうけんびきょうけんさ)」などを用いて、医師が水晶体の濁りの程度を客観的に評価します。これにより、自分で「見えにくい」と感じる前の段階で白内障の兆候を発見し、進行度を継続的に把握することが可能になります。早期に発見できれば、生活習慣の改善指導や点眼薬の処方など、早い段階から進行を遅らせるための対策を始めることができます。

手術を検討するタイミングは「生活に不便を感じ始めたとき」

「いつ白内障の手術を受ければ良いのだろう」と悩む方は少なくありません。白内障の手術を検討するタイミングは、水晶体の濁りの程度だけでなく、ご自身の「日常生活における不便さ」が最大の決め手となります。

例えば、「車の運転中に標識が見えにくくなってきた」「趣味の読書や裁縫が楽しめなくなった」「テレビの字幕がかすんで見える」「夜間に人や物との距離感がつかみにくくなった」など、具体的な生活上の支障を感じ始めたら、手術を検討する時期かもしれません。視力が0.7を下回ると運転免許の更新に影響が出るなど、客観的な基準ももちろんありますが、何よりも大切なのは、ご自身がどれだけ不自由を感じているかです。手術のタイミングは一人ひとり異なるため、眼科医とよく相談し、ご自身のライフスタイルや希望に合わせて決めることが大切です。

白内障の手術方法と眼内レンズの種類

現代の白内障手術は、非常に安全性が高く、短時間で行われる手術です。現在主流となっているのは、「超音波水晶体乳化吸引術(ちょうおんぱすいしょうたいにゅうかしゅつきゅうじゅつ)」と呼ばれる方法です。これは、濁った水晶体を細かく砕いて吸引し、その代わりに透明な人工の「眼内レンズ」を挿入することで視力を回復させる手術です。

眼内レンズには大きく分けて二つの種類があります。一つは「単焦点眼内レンズ」で、ある特定の距離(遠く、中間、近くのいずれか)にピントが合うように調整します。そのため、通常は遠くが見えるように設定し、手元を見る際には老眼鏡が必要になります。もう一つは「多焦点眼内レンズ」で、複数の距離にピントを合わせられるため、眼鏡への依存度を減らすことができます。多焦点レンズには、遠方から中間、遠方から近方、または遠方・中間・近方すべてに対応するものなど、様々な種類があります。多焦点レンズは眼鏡なしでの生活に近づけますが、夜間に光がにじんで見える「ハロー」や、光がまぶしく感じる「グレア」といった現象が起こることがあるため、ご自身の生活スタイルや目の状態に合わせて、医師と十分に相談して選択することが重要です。

手術後の注意点と合併症(後発白内障など)

白内障手術は安全な手術ですが、術後の適切なケアと注意点を守ることが、良好な視力維持のために不可欠です。手術後は、処方された点眼薬を指示通りにきちんと使用することが非常に大切です。これは感染症の予防や炎症を抑えるためです。また、術後しばらくは目をこすったり、強く圧迫したりしないように気をつけ、洗顔や入浴、洗髪なども医師の指示に従ってください。

手術後に起こりうる合併症で最も頻度が高いのが「後発白内障(こうはつはくないしょう)」です。これは、白内障が再発したわけではなく、眼内レンズを支えるために残しておいた水晶体の後ろの袋(後嚢)が、時間が経つにつれて濁ってくる現象です。もし後発白内障が起こっても、YAGレーザーという特殊なレーザーを使って濁った後嚢に小さな穴を開ける簡単な処置で、再び視力を回復させることができます。その他の合併症としては、感染症や眼圧上昇などごく稀なケースもありますが、これらを早期に発見するためにも、術後の定期検診を必ず受診することが重要です。

まとめ|生活習慣の見直しと定期検診で大切な目を守ろう

白内障は、加齢とともに誰にでも起こりうる目の病気です。しかし、その進行は日々の生活習慣の工夫によって遅らせることが十分に可能です。今回ご紹介したように、紫外線対策、抗酸化物質を意識した食生活、禁煙、そして糖尿病などの生活習慣病の適切な管理は、白内障の進行を穏やかにするために非常に重要な要素となります。

大切な目の健康を維持するためには、日常生活での予防策と、眼科での定期的な検診が欠かせません。自覚症状がなくても40歳を過ぎたら定期的に眼科を受診し、目の状態を専門医にチェックしてもらうことで、白内障の早期発見と適切なタイミングでの対応が可能になります。予防と検診の両方を実践することで、いつまでもクリアな視界を保ち、充実した日々を送りましょう。

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