白内障手術と同時に行う緑内障手術(iStent inject W)

白内障手術と同時に行う緑内障手術 iStent inject W

「緑内障の点眼薬が多く、毎日の点眼を負担に感じる」
「白内障手術を予定しており、緑内障の治療も同時にできるか知りたい」
「iStent inject Wで眼圧や点眼本数はどのくらい変わる?」
「手術後も緑内障の検査や目薬は必要?」

当院では、白内障手術と同時にiStent inject Wを留置する緑内障手術を行っています。

iStent inject Wは、房水の主な排出路にある線維柱帯へ2個の小さなステントを留置し、眼圧を下げることを目指す低侵襲緑内障手術(MIGS)の一つです。

手術によって失われた視野が回復したり、必ず点眼薬が不要になったりするわけではありません。このページでは、当院の対応範囲、適応、効果と限界、費用、流れ、合併症、術後の通院について説明します。

緑内障が気になる方へ

緑内障の点眼を続けており白内障手術も検討している方、他院で白内障・緑内障手術を勧められた方は「一般診療」でご相談ください。

視力、眼圧、視野、OCT、隅角、角膜内皮細胞、白内障の状態を確認し、iStent inject Wの併用が適しているかを判断します。紹介状、検査結果、使用中の点眼薬、お薬手帳があればご持参ください。

\ 24時間かんたん予約 /

目次

結論|当院のiStent inject Wは白内障手術との同時手術です

  1. 主な対象は、初期~中期の開放隅角緑内障です。
  2. 白内障手術と同じ角膜切開から、線維柱帯へ2個のステントを留置します。
  3. 白内障手術のみの場合に比べ、追加の眼圧下降や点眼負担の軽減が得られる可能性があります。
  4. 視野を元へ戻す手術でも、緑内障を完治させる手術でもありません。
  5. 術後も点眼薬、眼圧・OCT・視野検査、追加治療が必要になる場合があります。

緑内障手術の目的と、手術を検討する場面

緑内障治療の目的は、眼圧を下げて視神経への負担を減らし、今後の視野障害の進行を抑えることです。どの治療を選ぶかは、病型、病期、現在の眼圧、目標眼圧、視野の進行速度、点眼の副作用・継続状況などによって異なります。

スクロールできます
手術を検討する場面考え方
点眼しても
目標眼圧へ届かない
点眼の変更・追加、レーザー、手術を含めて治療を再検討します。
眼圧が低くても
視野・OCTが進行する
その方の視神経に合わせ、さらに低い目標眼圧が必要かを判断します。
副作用や点眼本数が
治療継続の負担
点眼方法や薬の見直しに加え、レーザー・手術を検討する場合があります。
白内障手術を予定している適応を満たす開放隅角緑内障では、同時にiStent inject Wを併用できる場合があります。
進行した緑内障で
非常に低い目標眼圧が必要
iStent以外の緑内障手術が適する場合があります。

iStent inject Wとは?

目の中では房水という液体が作られ、主に線維柱帯を通り、シュレム管などを経て排出されます。開放隅角緑内障では、隅角が開いていても、この流出路の抵抗が高くなっていることがあります。

iStent inject Wの2個の眼内ステントとインサーター

iStent inject Wは、インサーターに装填された2個の小さなチタン製ステントを、隅角鏡で確認しながら線維柱帯へ留置する眼内ドレーンです。線維柱帯を通過する房水がシュレム管へ流れやすくなるようにし、眼圧を下げることを目指します。

iStent inject Wを線維柱帯へ留置して房水流出を促す模式図

白内障手術で使用する角膜の切開部から目の内側より留置するため、iStentのために結膜を切開したり、眼外へ房水を流す濾過胞を作ったりする手術ではありません。ただし、「低侵襲」という分類は、合併症が起こらないことを意味するものではありません。

iStent inject Wの対応範囲|単独手術は行っていません

iStent inject Wは、国内では白内障手術との同時手術に承認され保険収載されています。

そのため、iStent inject Wは白内障手術と同時に行う場合のみ受けることができます。

白内障手術を予定していない方には、点眼治療、選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)、ほかの緑内障手術、または対応可能な医療機関への紹介を含めて検討します。

iStent inject Wの対象となる可能性がある方

日本緑内障学会の使用要件等基準を踏まえ、当院では診察と検査によって適応を個別に判断します。

主な対象となる可能性がある方
  • 成人である
  • 白内障があり、白内障手術を予定している
  • 主に初期~中期の原発開放隅角緑内障(正常眼圧緑内障を含む)または落屑緑内障である
  • 隅角が十分に開き、周辺虹彩前癒着などがなく、ステントを安全に留置できる
  • 緑内障点眼薬を使用している、または点眼治療を続けることが難しい
  • 術後の診察・隅角検査・長期的な緑内障検査を継続できる
対象にならない、または他の治療が適することがある方
  • 閉塞隅角緑内障、血管新生緑内障、ぶどう膜炎に伴う緑内障、外傷性緑内障など
  • 隅角の癒着・形態異常などにより、留置部位を十分に確認できない
  • 緑内障が進行し、非常に低い目標眼圧が必要である
  • 過去の内眼手術歴や、複雑な白内障手術となる可能性がある
  • 角膜内皮細胞が少ない
  • ステントの材質に対するアレルギーがある
  • 小児、または術後の検査・通院への協力が難しい

実際には、眼圧、視野、OCT、視神経、隅角、角膜内皮細胞、白内障、過去の手術歴、現在の点眼治療などを総合して判断します。リストに当てはまっても、必ず手術を受けられるわけではありません。

期待できる効果と限界

スクロールできます
確認したいことiStent inject Wで考えられること
眼圧白内障手術のみの場合に比べ、追加の眼圧下降が得られる可能性があります。効果には個人差があります。
緑内障点眼薬術後の眼圧が目標範囲に入れば、種類・回数を減らせる場合があります。不要になる保証はありません。
視力白内障によるかすみは白内障手術で改善が期待されますが、緑内障による視野障害の回復を目的とする手術ではありません。
緑内障の進行眼圧を下げることで進行を抑えることを目指しますが、緑内障が完治するわけではありません。
将来の治療点眼、レーザー、追加の緑内障手術が必要になる場合があります。
進行した緑内障必要な目標眼圧によっては、濾過手術やチューブシャント手術など他の術式が適する場合があります。

点眼本数を減らすことだけを目的にせず、現在の視野をできるだけ長く守るために、白内障手術のみ、iStent併用、レーザー、ほかの手術を比較して治療方針を決めます。

手術前に行う主な検査

確認項目主な目的
視力・屈折
白内障検査
白内障による見えにくさ、矯正視力、眼内レンズ選択に必要な測定を行います。
眼圧と治療歴現在・過去の眼圧、点眼薬、レーザー治療歴、目標眼圧を確認します。
隅角検査隅角の広さ、癒着、色素、落屑物質、血管新生などを確認し、留置可能か判断します。
眼底・OCT
視野検査
緑内障の病期と進行、中心視野への影響を確認します。
角膜内皮細胞検査角膜を透明に保つ細胞の状態を確認します。
病歴・薬
アレルギー
目の手術歴、全身疾患、内服薬、ステント材質に関するアレルギーなどを確認します。

検査結果によっては、iStentを予定していても白内障手術のみへ変更したり、別の緑内障治療を提案したりする場合があります。

手術の流れ・麻酔・日帰り手術

STEP
診察・適応検査

緑内障の病型・病期、眼圧、視野、OCT、隅角、角膜内皮細胞、白内障を確認します。

STEP
治療方針・眼内レンズ・日程の決定

白内障手術のみ、iStent併用、ほかの緑内障治療を比較し、効果・限界・合併症・術後通院をご説明します。

内服薬は自己判断で中止せず、当院の指示に従ってください。

STEP
手術当日

点眼麻酔などを行い、白内障手術後、同じ角膜切開からiStent inject Wを挿入し、線維柱帯へ2個留置します。

手術中にまぶしさ、圧迫感、器具が触れる感覚を感じることがあります。手術時間は目の状態によって異なります。

術後に院内で状態を確認し、問題がなければご帰宅いただきます。ご自身で車を運転して来院しないでください。

STEP
術後診察

視力、眼圧、炎症、角膜、眼内レンズを確認し、必要に応じて隅角鏡でステント位置を確認します。

緑内障点眼薬を減らす・継続する判断は、術後の眼圧と目標眼圧を確認して行います。

起こり得る合併症と、追加治療の可能性

iStent inject Wは低侵襲緑内障手術に分類されますが、医療行為である以上、合併症が起こる可能性があります。

  • 一時的な前房出血
  • 眼内の炎症
  • 一時的な眼圧上昇
  • 期待した眼圧下降が得られない
  • ステントの閉塞、位置ずれ、留置不良
  • 角膜内皮細胞の減少
  • 感染
  • 白内障手術に伴う合併症
  • 点眼薬、レーザー治療、追加手術が必要になる

合併症の内容と可能性は、白内障の難しさ、隅角・角膜・緑内障の状態などによって異なります。手術前に患者さんごとの注意点をご説明します。

術後に次の症状がある場合は、予約日を待たずご連絡ください
  • 急激な視力低下
  • 強い目の痛み
  • 強い充血や腫れ
  • 膿のような目やに
  • 頭痛、吐き気・嘔吐を伴う急なかすみ

術後の点眼・通院・MRI検査

手術後は、感染や炎症を抑える点眼薬を当院の指示どおり使用してください。緑内障点眼薬も、医師から変更・中止の指示があるまでは自己判断で中止しないでください。

術後診察では、視力、眼圧、炎症、角膜内皮細胞、ステント位置などを確認します。長期的には眼圧だけでなく、眼底写真、OCT、視野検査を続けて緑内障の進行を確認します。

洗顔、洗髪、入浴、仕事、運動、運転を再開する時期は、白内障手術後の状態を含めて個別にご案内します。

iStent inject Wは、定められた条件下でMRI検査を受けられるMR Conditionalの医療機器です。術後にお渡しする患者カードは保管し、MRIなどの検査を受ける際は、事前に医療機関へiStentが入っていることをお伝えください。

費用と健康保険

当院で行う白内障手術併用iStent inject Wは、健康保険が適用されます。

自己負担額は、自己負担割合、検査、使用薬剤、白内障手術の内容、眼内レンズの選択などによって異なります。医療費が一定額を超える場合は、高額療養費制度を利用できることがあります。

具体的な費用は、診察・検査後に手術内容が決まった段階でご案内します。眼内レンズの種類と費用は白内障手術ページでもご確認いただけます。

iStent inject Wが適さない場合の治療

iStent inject Wが適さない場合や、白内障手術を予定していない場合も、緑内障治療を中断するわけではありません。

  • 点眼薬の種類・回数・点眼方法の見直し
  • 選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)などのレーザー治療
  • ほかの流出路再建術
  • 線維柱帯切除術などの濾過手術
  • チューブシャント手術
  • 対応可能な医療機関への紹介

進行度と目標眼圧によって、治療の利益と負担が異なります。「点眼を減らしたい」という希望だけでなく、視野を守るために適切な治療かを優先して判断します。

関連ページ

まとめ|手術の目的と限界を理解し、適応を検査で判断します

iStent inject Wは、白内障手術と同時に、線維柱帯へ2個のステントを留置して房水の流出を促し、追加の眼圧下降を目指す低侵襲緑内障手術です。

当院では白内障手術との同時手術のみ行っており、単独手術には対応していません。主な対象は、白内障を合併した成人の初期~中期の開放隅角緑内障ですが、最終的な適応は検査で判断します。

手術によって失われた視野が回復したり、必ず点眼が不要になったりするわけではありません。術後も点眼・定期検査・追加治療が必要になる可能性を含めて、患者さんごとに治療方法をご説明します。

緑内障が気になる方へ

緑内障の点眼を続けており白内障手術も検討している方、他院で白内障・緑内障手術を勧められた方は「一般診療」でご相談ください。

視力、眼圧、視野、OCT、隅角、角膜内皮細胞、白内障の状態を確認し、iStent inject Wの併用が適しているかを判断します。紹介状、検査結果、使用中の点眼薬、お薬手帳があればご持参ください。

\ 24時間かんたん予約 /

iStent inject W・緑内障手術についてよくあるご質問

iStent inject Wとは、どのような手術ですか?

房水の主な排出路にある線維柱帯へ、2個の小さなステントを留置し、眼圧を下げることを目指す低侵襲緑内障手術です。

当院では白内障手術と同じ手術中に、同じ角膜切開から留置します。

当院でiStent inject Wの単独手術を受けられますか?

当院では単独手術を行っていません。白内障手術と同時に留置する場合のみ対応しています。

国内では条件を満たす場合の単独手術として使用できることがありますが、当院の診療方針とは別です。白内障手術を予定していない方には、点眼・レーザー・ほかの手術・紹介を検討します。

どのような緑内障が対象ですか?

主に、白内障手術を予定している成人の初期~中期の原発開放隅角緑内障(正常眼圧緑内障を含む)または落屑緑内障が候補になります。

隅角、眼圧、視野、OCT、角膜内皮細胞、手術歴などを確認して適応を判断します。

正常眼圧緑内障でも受けられますか?

正常眼圧緑内障も原発開放隅角緑内障の一つで、白内障手術を予定し、ほかの適応条件を満たす場合は候補になることがあります。

現在の眼圧が低くても、必要な目標眼圧や進行速度によって適否は異なります。

進行した緑内障にもiStentが向いていますか?

進行した緑内障で非常に低い目標眼圧が必要な場合は、iStentだけでは十分でなく、ほかの緑内障手術が適することがあります。

視野、OCT、眼圧、進行速度を確認して治療を選びます。

手術を受けると失われた視野は回復しますか?

緑内障ですでに障害された視神経や失われた視野を、iStent inject Wで元へ戻すことはできません。

手術の目的は眼圧を下げ、今後の視野障害の進行を抑えることです。

手術後は緑内障の目薬が不要になりますか?

術後の眼圧が目標範囲に入れば、点眼薬の種類や回数を減らせる場合がありますが、すべての方で不要になるわけではありません。

医師の指示があるまでは自己判断で中止しないでください。

手術は痛いですか?入院は必要ですか?

点眼麻酔などを行い、痛みに配慮して手術を進めます。まぶしさ、圧迫感、器具が触れる感覚を感じる場合があります。

当院では日帰りで行い、術後に状態を確認してご帰宅いただきます。目の状態によって対応が異なる場合があります。

どのような合併症がありますか?

一時的な前房出血、炎症、眼圧上昇、十分な眼圧下降が得られないこと、ステントの閉塞・位置ずれ、角膜内皮細胞の減少、感染などがあります。

白内障手術に伴う合併症や、追加の点眼・レーザー・手術が必要になる可能性もあります。

費用に健康保険は適用されますか?

適応を満たし、白内障手術と同時に行うiStent inject Wには健康保険が適用されます。

自己負担額は、負担割合、検査、薬剤、白内障手術の内容、眼内レンズの選択などで異なります。高額療養費制度を利用できる場合があります。

iStentが入っていてもMRI検査を受けられますか?

iStent inject Wは、定められた条件下でMRI検査が可能なMR Conditionalの医療機器です。

MRIを受ける前に医療機関へiStentが入っていることを伝え、患者カードを提示してください。

iStentが適さない場合はどうなりますか?

点眼薬の見直し、SLTなどのレーザー治療、ほかの流出路再建術、濾過手術、チューブシャント手術などを検討します。

当院で対応しない術式が適する場合は、対応可能な医療機関へご紹介します。

監修:大阪鶴見まつやま眼科 院長 松山真弘
最終医学的確認日:2026年8月22日

目次