目がかゆい

「目がかゆくて、仕事や勉強に集中できない」
「花粉の季節になると、目のかゆみが止まらない」
「かゆくて、ついゴシゴシこすってしまう…」

「目のかゆみ」は、非常につらく不快な症状であり、多くの方が経験する目のトラブルです。そのあまりのかゆさに、我慢できず強くこすってしまうこともあるでしょう。しかし、その行為が症状をさらに悪化させ、時には目を傷つけてしまう危険性があることをご存知でしょうか?

目のかゆみの原因は様々ですが、そのほとんどは「アレルギー性結膜炎」です。しかし、中にはドライアイや他の目の病気が隠れていることもあります。原因に合わない市販の目薬を使い続けても、根本的な解決にはなりません。

この記事では、つらい目のかゆみでお悩みの患者さんに向けて、眼科専門医の立場から以下の内容を詳しく、そして分かりやすく解説していきます。

  • 目のかゆみを引き起こす、最も多い原因「アレルギー性結膜炎」とは?
  • アレルギー以外の、目のかゆみの原因(ドライアイ・眼瞼炎など)
  • 【重要】かゆくても絶対にダメ!目をこする危険性
  • 家庭でできる応急処置と、眼科での専門的な治療法

この記事を最後までお読みいただくことで、ご自身の症状への正しい知識が身につき、つらいかゆみから解放されるための、最も安全で効果的な方法がわかります。

目次

目のかゆみの最大の原因「アレルギー性結膜炎」

目のかゆみを訴えて眼科を受診される患者さんの、原因として最も多いのが「アレルギー性結膜炎」です。これは、特定のアレルギー原因物質(アレルゲン)が目の表面(結膜)に付着することで、免疫が過剰に反応し、炎症とかゆみを引き起こす病気です。

アレルギー反応の仕組み

アレルゲンが目に入ると、結膜にあるマスト細胞という細胞から、「ヒスタミン」などの化学伝達物質が大量に放出されます。このヒスタミンが、知覚神経を刺激して「強いかゆみ」を、血管を拡張させて「充血」や「腫れ」を引き起こすのです。

原因となるアレルゲンの種類

アレルギー性結膜炎は、原因となるアレルゲンによって、大きく2つのタイプに分けられます。

  • 季節性アレルギー性結膜炎
    特定の季節にだけ症状が現れるタイプで、その代表が「花粉症」です。春のスギ・ヒノキ、夏のイネ科植物、秋のブタクサ・ヨモギなど、季節ごとに飛散する植物の花粉が原因となります。
  • 通年性アレルギー性結膜炎
    一年を通して症状が見られるタイプです。主な原因は、室内に存在する「ハウスダスト」(ダニの死骸やフン、カビ、ペットの毛やフケなど)です。

その他、コンタクトレンズの汚れがアレルゲンとなって、まぶたの裏側にブツブツとした炎症(巨大乳頭)ができる「巨大乳頭結膜炎」も、強いかゆみと異物感の原因となります。

アレルギー性結膜炎の主な症状

  • 我慢できないほどの、強い目のかゆみ
  • 目の充血、まぶたの腫れ
  • サラサラとした水のような涙や、白く糸を引くようなネバネバした目やに
  • 目がゴロゴロする異物感
  • くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどのアレルギー性鼻炎の症状を伴うことも多い

アレルギー以外の、目のかゆみの原因

かゆみの原因はアレルギーがほとんどですが、以下のような他の病気が隠れている可能性もあります。

眼瞼炎

まつ毛の生え際や、その内側にある脂の腺(マイボーム腺)が、細菌感染や脂詰まりによって炎症を起こす病気です。まぶたの縁が赤くなったり、フケのようなものが付着したりし、かゆみやただれ、異物感などを引き起こします。

ドライアイ

涙の量が減ったり、質が悪くなったりして目の表面が乾く病気です。涙によるバリア機能が低下するため、目の表面が刺激を受けやすくなり、かゆみやヒリヒリ感、疲れやすさといった症状が現れます。アレルギー性結膜炎と合併していることも非常に多いです。

感染性結膜炎

細菌やウイルスが感染して起こる結膜炎です。主な症状は充血や目やにですが、炎症に伴ってかゆみを感じることもあります。ただし、アレルギー性結膜炎ほどの激しいかゆみになることは稀です。

【最重要】かゆくても、絶対にこすらないで!目をこするリスク

目がかゆいと、無意識に、あるいは我慢できずにゴシゴシとこすってしまいがちです。しかし、目をこすることは、百害あって一利なし症状を悪化させ、様々な危険を引き起こします。

  • かゆみの悪化(悪循環):目をこする物理的な刺激で、かゆみの原因であるヒスタミンがさらに放出され、もっとかゆくなるという悪循環に陥ります。
  • 角膜(黒目)へのダメージ:デリケートな角膜の表面に、目に見えない無数の傷(角膜びらん)をつけてしまいます。これが異物感や痛みの原因になります。
  • 感染症のリスク:手についた細菌が、傷ついた角膜や結膜から侵入し、細菌性結膜炎などを併発する危険性があります。
  • 結膜浮腫(白目がぶよぶよになる):強い刺激で結膜の血管から水分が漏れ出し、白目がゼリーのようにぶよぶよに腫れてしまうことがあります。
  • 円錐角膜や網膜剥離の誘発:長期的に目をこする癖は、角膜が薄くなって突出する「円錐角膜」や、網膜に穴が開く「網膜剥離」といった重篤な病気の誘因となることも指摘されています。

目がかゆい時の対処法

家庭でできる応急処置

強いかゆみに襲われたときは、こする前に以下の方法を試してみてください。

  1. アレルゲンを洗い流す:防腐剤の入っていない人工涙液や、洗眼専用のカップ(水道水はNG)で、目に入ったアレルゲンを優しく洗い流します。
  2. 冷やす:清潔な濡れタオルや、タオルで包んだ保冷剤などを、閉じたまぶたの上から優しく当てて冷やします。冷やすことで、血管が収縮し、炎症やかゆみが和らぎます。
  3. コンタクトレンズを外す:レンズに付着したアレルゲンが症状を長引かせます。かゆい時はコンタクトを外し、メガネを使用しましょう。

当院での専門的な治療

セルフケアで改善しない、あるいは症状が強い場合は、我慢せずに眼科を受診してください。市販の目薬には様々な種類があり、原因に合わないものを使っても効果はありません。

大阪市鶴見区の大阪鶴見まつやま眼科では、目がかゆい原因を正確に診断し、症状に合わせて最適な点眼薬を処方します。

  • 抗ヒスタミン点眼薬:かゆみの原因であるヒスタミンの働きを直接ブロックし、速やかにかゆみを抑えます。
  • メディエーター遊離抑制点眼薬:ヒスタミンなどを放出するマスト細胞を安定させ、アレルギー反応そのものが起きにくくする薬です。花粉症など、症状が出る時期が予測できる場合に、予防的に使用すると非常に効果的です。
  • ステロイド点眼薬:炎症やかゆみが非常に強い場合に、短期間使用します。炎症を強力に抑える効果がありますが、眼圧上昇などの副作用の可能性があるため、必ず眼科医の管理下で使用する必要があります。

まとめ:つらい目のかゆみは、我慢せずに眼科へ

目のかゆみは非常につらい症状ですが、その原因の多くはアレルギーであり、適切な治療でコントロールすることが可能です。

【この記事のポイント】

  • 目のかゆみの原因のほとんどは、花粉やハウスダストによる「アレルギー性結膜炎」
  • かゆくても絶対に目をこすってはいけない角膜を傷つけ、症状を悪化させるだけ。
  • 応急処置は「洗い流す」「冷やす」が基本。
  • 市販薬で改善しない場合は、眼科で処方される点眼薬が最も効果的で安全。

毎年同じ季節にかゆみに悩まされている方も、原因がはっきりしないかゆみが続いている方も、自己判断で済ませずに、ぜひ一度専門医にご相談ください。
大阪市鶴見区の大阪鶴見まつやま眼科では、患者さんのアレルギーの原因やライフスタイルを考慮しながら、最適な治療法をご提案し、つらいかゆみからの解放をサポートいたします。

目がかゆい よくあるご質問(Q&A)

つらい目のかゆみについて、患者さんからよく寄せられるご質問とその回答をまとめました。ご自身の症状と照らし合わせ、不安の解消にお役立てください。

市販のアレルギー用目薬を使っても、目のかゆみが治まりません。なぜでしょうか?

市販薬で効果が不十分な場合、いくつかの理由が考えられます。
まず、かゆみの原因がアレルギーではない可能性です。ドライアイや眼瞼炎など、別の原因には市販のアレルギー薬は効きません。また、アレルギーが原因であっても、市販薬に含まれる抗アレルギー成分だけでは抑えきれないほど、炎症が強いケースもあります。眼科では、症状の強さに応じて、より効果の高い抗アレルギー薬や、炎症を強力に抑えるステロイド点眼薬などを処方できます。
自己判断で薬を使い続ける前に、一度専門医に正しい原因を診断してもらうことが、つらいかゆみから解放される一番の近道です。

目がかゆい時、コンタクトレンズは着けても大丈夫ですか?

目がかゆい時のコンタクトレンズ装用は、なるべく中止してください。
理由は3つあります。第一に、レンズが花粉などのアレルゲンを目の中に閉じ込めてしまい、症状を悪化・長期化させる原因になるからです。第二に、かゆくて目をこすってしまった場合、レンズと角膜(黒目)の間で摩擦が起こり、角膜に大きな傷をつけてしまう危険性があるためです。第三に、そもそもかゆみの原因が、レンズの汚れやアレルギー(巨大乳頭結膜炎)である可能性も考えられます。
症状が治まるまではメガネを使用し、眼科を受診して原因を特定することが大切です。

目がかゆい時、温めるのと冷やすのはどちらが効果的ですか?

目のかゆみの原因がアレルギー反応である場合、効果的なのは「冷やす」ことです。
かゆみは、アレルギー反応によって血管が拡張し、ヒスタミンというかゆみ物質が放出されることで起こります。目を冷やすと、血管が収縮するため、炎症や腫れが和らぎ、かゆみ物質の放出も抑えられます。清潔な濡れタオルや、タオルで包んだ保冷剤などを、閉じたまぶたの上から優しく当ててください。
逆に、温めると血行が促進されてしまい、アレルギーによるかゆみは悪化する可能性があります。ただし、ドライアイや眼精疲労(疲れ目)が原因の場合は温める方が効果的なこともあり、原因によって対処法が異なるため注意が必要です。

アレルギー以外に、目のかゆみを引き起こす原因はありますか?

はい、あります。アレルギー性結膜炎が最も多い原因ですが、それ以外の病気も考えられます。
代表的なのは「眼瞼炎」と「ドライアイ」です。眼瞼炎は、まつ毛の生え際に細菌が感染したり、脂を出す腺(マイボーム腺)が詰まったりして炎症が起こる病気で、まぶたの縁が赤くなり、フケのようなものが出てかゆみを伴います。
また、ドライアイは目の表面が乾燥してバリア機能が低下するため、わずかな刺激にも敏感になり、かゆみやゴロゴロ感として感じることがあります。これらはアレルギーの治療薬では改善しないため、正確な診断が重要です。

ストレスが原因で、目がかゆくなることはありますか?

ストレスが「直接的な原因」となってアレルギー反応を引き起こすわけではありません。しかし、ストレスは目のかゆみを「悪化させる要因」になり得ます。過度なストレスや疲労、睡眠不足は、自律神経のバランスを乱し、免疫機能を低下させます。その結果、体がアレルギー反応に対してより敏感になったり、皮膚のバリア機能が弱まって炎症が起きやすくなったりします。また、ストレスはドライアイを悪化させることも知られており、それが間接的にかゆみを引き起こすこともあります。
かゆみが長引く場合は、アレルギー対策と同時に、生活習慣を見直し、心身をリラックスさせることも大切です。

どうしても目がかゆくて、こするのを我慢できません。何か良い方法はありますか?

お気持ちはよく分かります。しかし、目をこするのは症状を悪化させるだけでなく、目を傷つける危険な行為です。
まず試していただきたいのは、「冷やす」ことと「人工涙液で洗い流す」ことです。
これらはかゆみを一時的に和らげる応急処置として有効です。しかし、根本的な解決策は、かゆみの原因である「ヒスタミン」の働きを強力にブロックする、医療用の抗アレルギー点眼薬を使用することです。眼科で処方される点眼薬は、市販薬よりも効果が高く、速やかにかゆみを抑えることができます。かゆみそのものがなくなれば、こすりたいという衝動も自然となくなります。
我慢できないほどの強いかゆみは、治療が必要なサインです。ぜひ専門医にご相談ください。

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