
白内障は年齢とともに誰にでも起こりうる目の病気で、見えにくさを感じて日常生活に支障をきたすほど進行することもある点が特徴です。
加齢が主な原因とされていますが、生活習慣や環境によって発症のリスクを下げ、予防できる可能性があります。
この記事では、白内障の原因やなりやすい人の特徴、予防のためにできることについて詳しく紹介します。
白内障とは
白内障とは、目の中でカメラのレンズのような役割を持つ水晶体が白く濁り、見え方に影響が出る病気です。
加齢やその他の原因により、水晶体の中のタンパク質が変性し濁ることにより発症します。
白内障は、50代から症状が現れる方が増えはじめ、80代になるとほとんどの方がなんらかの症状を自覚する身近な病気です。
白内障の初期は自覚症状がほとんどなく、ゆっくりと進行していくため、気が付いた時には症状が進行していたという場合も少なくありません。
放置すると緑内障など失明につながる眼疾患を引き起こす可能性もあり、定期的な眼科検診が大切です。
白内障の症状
白内障の代表的な症状は、以下のとおりです。
- ものがぼやけて見える
- ものがかすんで見える
- 強い光がやけにまぶしく感じる
- 目が疲れやすい
- 人やものが二重に見える
- 近視が進んだ気がする
疲れ目や老眼とも似た症状のため、症状を自覚しにくい方が少なくありません。
明るいところや夜間の車のヘッドライトなどでまぶしさを感じるようになり、症状に気が付くケースも多いため、普段の見え方と違和感があれば早めに眼科を受診しましょう。
白内障の原因
白内障は、大きく分けて先天性白内障と後天性白内障の2種類があります。
生まれたときから目の水晶体が濁っている白内障は先天性白内障と呼ばれ、遺伝的な問題や胎内感染、染色体異常などによるものです。
生まれつきではなく、何らかの原因がある場合は後天性白内障とよばれ、主な原因は加齢ですが、その他の病気や外的要因による場合もあります。
後天性白内障を引き起こす原因は以下の通りです。
- 加齢
- 糖尿病
- 赤外線
- 紫外線
- ステロイド薬
- 放射線
- 喫煙
- 外傷
加齢以外にも多くの原因があり、なかには若年層であっても白内障となるケースもあります。
年齢を問わず誰でもなり得る病気のため、白内障の原因を知り、予防につなげることは大切です。
加齢
白内障の一般的な原因は加齢です。
加齢に起因する白内障を加齢性白内障、もしくは老人性白内障といいます。
早い方で40代から白内障の自覚症状が認められ、80代ではほとんどの方が白内障の症状が見られるほど身近な病気です。
しかし、高齢になると自覚症状に気が付きにくいケースもあり、放置してしまう可能性もあります。
自覚症状がある場合は早めに眼科を受診するとともに、40代になったら自覚症状がなくとも定期的な眼科検診を受けることが早期発見につながります。
糖尿病
糖尿病の持病がある方は、白内障を発症しやすいです。
加齢による白内障では、水晶体が徐々に硬くなって濁るため比較的進行がゆっくりなのに対し、糖尿病による白内障は水晶体が柔らかいままスピードの速い濁り方をするのが特徴です。
また、糖尿病性白内障は加齢による白内障に比べて若い年齢の方でも発症します。
通常の白内障手術と同じ術式で治療が行えるため、糖尿病性白内障が原因で失明することはほとんどありません。
しかし、糖尿病性白内障を放置すると、失明のリスクがある糖尿病性網膜症などの別の眼疾患を見逃す可能性があるため、眼科での定期的な診察と適切なタイミングの手術が重要です。
赤外線
ガラス職人などの強い赤外線を長期間浴び続ける職業の方は白内障になるリスクが高いです。
ガラス職人以外でも溶鉱炉や電気溶接でも原因となることがあり、「ガラス工白内障」と呼ばれることもあります。
保護眼鏡をかけることで予防できる可能性が高いです。
紫外線
水晶体が紫外線を受けると活性酸素が発生し、水晶体内のタンパク質が酸化することで白内障を引き起こします。
長時間強い紫外線を浴び続けていると進行を早める可能性があるため、注意が必要です。
ステロイド薬
ステロイドを含んだ薬は、医療現場で多く使われる重要な薬剤ですが、長期間使用することで白内障のリスクを高めます。
ステロイドは水晶体のタンパク質に作用し、構造を変化させることがあるため、長期間のステロイドの使用で水晶体の透明度が低下し徐々に濁るのです。
特にステロイドの内服薬や吸入薬を多量に摂取することで白内障が発症しやすくなり、点眼薬も長期間の使用でリスクが上がる可能性があります。
放射線
レントゲンやCTなど放射線を浴びる職業の方は白内障になりやすいです。
短期間に大量の放射線を浴びる、または少ない放射線を長期間慢性的に浴びることで白内障のリスクは高まります。
予防には保護メガネなどをかけることが推奨されています。
喫煙
たばこに含まれるニコチンは血流を悪くする作用があり、血液が行きわたりにくくなることで目の老化が早まり白内障を早く発症する可能性があります。
また、喫煙すると身体は神経細胞の酸化を抑える働きであるビタミンCを多く失うため、視力の維持に必要な栄養が行きわたらず、老化を促進させるリスクも高まります。
特に、1日20本以上の喫煙で非喫煙者に比べて2~3倍程度白内障を発症するリスクが高まるとされているため注意が必要です。
副流煙による受動喫煙は、タバコを直接吸っていなくても身体に悪影響を及ぼすとされているため、自分だけでなく周りの人たちのためにも禁煙を心がけましょう。
外傷
目の怪我や、目の周辺をぶつけることで、水晶体を覆う袋に亀裂が入ったり、白内障が急激に進行する可能性があります。
外傷を受けた後に、まぶしさを感じる場合はすぐに眼科を受診しましょう。
ただし、外傷による白内障の場合は、症状が現れるまで数年かかるケースもあるため、定期的な眼科検診が大切です。
白内障になりやすい人・なりにくい人
白内障は加齢によって誰にでも起こる可能性がありますが、進行のスピードや発症のタイミングには個人差があります。
このような違いは、生活習慣や健康状態、環境要因などの影響を受けていると考えられています。
ここでは、白内障になりやすい人の特徴と、なりにくい人がいるのかという点について詳しく解説します。
自身のリスクを把握することで、早めの対策や生活改善につなげるヒントになるかもしれません。
白内障になりやすい人の特徴
加齢による白内障は中高年以降で発症しやすくなりますが、以下の要因でも白内障を発症しやすくなるとされています。
- 喫煙
- 屋外での仕事が多い
- 不摂生な生活(食生活や睡眠不足など)
- 目の外傷
- アトピー性皮膚炎
不摂生な食生活により糖尿病を引き起こし、合併症として白内障を発症するケースもあります。
また、アトピー性皮膚炎の方は、ステロイド薬剤の使用や、痒みにより目を強くかいた際の刺激により、白内障になりやすい可能性があります。
白内障になりにくい人はいる?
白内障になりにくい体質については、よくわかっていません。
しかし、白内障の発症リスクを高めるものとして、紫外線、喫煙、糖尿病があるため、健康的な生活と紫外線予防のサングラス、禁煙を心がけることでリスクを軽減できる可能性があります。
白内障の予防方法
白内障の原因には、加齢以外に紫外線の影響や喫煙、糖尿病、酸化ストレスなどが関係しています。
これらの要因を意識してコントロールすることが白内障の予防につながります。
ここでは、白内障の予防に効果があるとされる具体的な方法について解説します。
紫外線を防ぐ
紫外線は長時間浴びることで白内障のリスクを高めます。
紫外線から目を守るには、以下のようなグッズを活用しましょう。
- 紫外線カット機能のついたサングラス
- つばの長い帽子
- 日傘
晴れた日差しの強い日は帽子やサングラスをかける方もいますが、曇りの日にも紫外線は出ているため、外に出かける際は常に身に着けると安心です。
食生活を改善する
白内障は血液の糖化ストレスや酸化ストレスによってタンパク質が変性し、発症すると考えられています。
糖化ストレスや酸化ストレスを減らすことが予防に有効で、食生活によってもリスク軽減の可能性があります。
糖化ストレスを減らす
血液中の糖とタンパク質が結合することでできる物質が、酸化ストレスを引き起こします。
血液中の糖が増えることで糖化ストレスが起こり、それが酸化ストレスとつながることで白内障になりやすくなるのです。
糖化ストレスを減らすためには、血液中の糖を減らすことが重要です
加糖の炭酸飲料や揚げ物、スナック菓子などを避けることで予防につながります。
しかし、過度な糖質制限は身体に悪影響を及ぼす可能性もあり、好きなものを一切禁止することで精神的なストレスにもつながります。
量を少なくすることから始め、間食やおやつを見直し、炭水化物を摂り過ぎないように気を付けましょう。
酸化ストレスを減らす
酸化ストレスを減らすには、抗酸化作用のある栄養素を摂取することが大切です。
抗酸化作用のある栄養素と多く含む食品は以下の通りです。
抗酸化作用のある栄養素 | 多く含む食材 |
---|---|
ビタミンC | 緑黄色野菜・アセロラ・ゆず・キウイフルーツなど |
ビタミンE | アーモンド・うなぎ・かぼちゃなど |
ルテイン | にんじん・ほうれん草・ピーマン・モロヘイヤ・小松菜など |
ゼアキサンチン | パプリカ・トウモロコシ・ほうれん草・柿・ブロッコリーなど |
白内障予防のためには、意識してこれらの食べ物を摂取するようにしましょう。
禁煙する
喫煙は白内障発症のリスクを上げるため、禁煙することで白内障を予防できる可能性があります。
喫煙は、白内障だけでなくその他の病気のリスクを高めるため、身体の健康のために控えましょう。
処方された目薬を点眼する
水晶体が一度濁ってしまうと点眼薬では透明に戻ることはありません。
しかし、白内障の予防や進行を抑制する目的で使われる目薬は2種類あります。
- ピレノキシン点眼液:白内障の原因となるキノイド物質の成長を抑え水晶体が混濁化するのを防ぐ
- グルタチオン点眼液:白内障の進行にともない減少するグルタチオン量を補う
これらの目薬は、市販されていないため、眼科を受診して処方してもらう必要があります。
ただし、点眼による白内障の予防効果や進行抑制効果については限定的で、医師によっては必要がないと判断される場合もあります。
自身の健康状態や症状の進行度によっても点眼治療が有効か変わるため、医師と相談のうえ検討しましょう。
生活習慣を見直す
白内障の発症原因のひとつに糖尿病があります。
糖尿病性白内障は、加齢による白内障よりも早い年齢で発症するケースもあるため、糖尿病の対策は白内障の発症を遅らせることにつながります。
糖尿病による白内障は、高血糖状態が続く状態により水晶体に糖が蓄積して濁りの原因となることで起こります。
糖尿病にならないためには、生活習慣の見直しが大切です。
- バランスの良い食事
- 定期的な運動
- 健康的な体重管理
- ストレス管理
- 血糖値検査や血圧などの定期的な検査
- 禁煙と節酒
糖尿病の予防には、日常生活を工夫することが大切です。大きなストレスにならない範囲で、少しずつ生活習慣を正していきましょう。
白内障は手術しないで自分で治せる?
白内障を発症し水晶体が濁ると、自然に治癒することなく、手術以外で治すことはできません。
手術は日常生活に支障が出ていると医師が判断した際に検討され、手術によって早期に視力や見え方を回復させることが可能です。
手術と聞くと、「手術って何をするの?」「手術以外の治療法は?」と不安になる方も少なくありません。
ここでは、白内障の治療法について解説します。
白内障の治療法
自覚症状がない白内障の場合や、軽度で日常生活に支障がない場合には点眼治療により進行を抑えることもあります。
点眼治療は根治的治療ではなく、白内障が治癒するものではありません。
白内障を治すには手術が必要で、現在では超音波乳化吸引術という超音波で濁った水晶体を破砕して取り出し、眼内レンズを入れる方法が一般的です。
多くの白内障患者の方は、日帰りで手術を受けられ、手術時間は10~20分と短時間です。
麻酔も点眼で行われるため、痛みの少ない手術と言われています。
手術後は感染防止のためさまざまな日常生活の注意があるものの、術前よりクリアに見えるようになったと感じる方が多いです。
白内障は放置することで、失明のリスクがある緑内障などを引き起こす可能性があります。
適切な時期に手術を行うことで、生活の質が上がり、転倒や事故のリスクを減らすことにもつながります。
まとめ
白内障は、加齢によりほとんどの方が発症する病気と言われていますが、毎日の生活や環境を見直すことで発症時期を遅らせる可能性があります。
特に乱れた生活習慣の改善は、糖尿病などの生活習慣病の予防にもつながるため、健康のためにぜひ取り入れてみてください。
『大阪鶴見まつやま眼科』では、超音波乳化吸引術による白内障の日帰り手術を行っています。
精度の高い検査・手術機器を用い、患者さんの希望やライフスタイルに合わせて手術のタイミングや眼内レンズを検討します。
白内障の予防についても、気になることがあれば『大阪鶴見まつやま眼科』にご相談ください。