
オルソケラトロジーは特殊なハードコンタクトレンズを就寝中に装用して角膜の形を変えることで、近視を矯正する治療法です。
オルソケラトロジーについて、どのようなしくみで視力が回復するのか、デメリットはないのかなどが気になる方は多いでしょう。
この記事では、オルソケラトロジーの効果や副作用・メリットやデメリット、費用相場などを紹介します。
オルソケラトロジーの治療に向いているかどうかも紹介するため、近視の治療を考えている人はぜひ確認してみてください。
オルソケラトロジーとは
オルソケラトロジーは、特殊な形をしたハードコンタクトレンズを就寝中に装用し、角膜の形を変化させて視力を改善する近視矯正法です。
レンズを装用して角膜の前面を平坦化し、光の屈折を調整することで視力が改善するというしくみです。
角膜は柔軟性があり、就寝中にレンズを装用するとゆっくりとレンズの形に沿って変化し、レンズを外した後もその形をしばらく保つため、日中は裸眼で過ごせます。
オルソケラトロジーはアメリカでは30年以上前から研究されている治療法で、1997年にヨーロッパCEマーク認可、2002年に米国FDA認証など、世界64ヶ国で認可されています。
治療法として長年の実績があり、日本でも2009年に厚生労働省から治療用コンタクトレンズとして認可されています。
近視とは
近視とは、遠くのものがよく見えない、遠くのものにピントを合わせづらい状態のことで、原因には大きく分けて以下の3つがあります。
- 屈折性近視
- 核性近視
- 軸性近視
屈折性近視は緊張状態が続き、角膜または水晶体の光の屈折率が通常より強くなることに起因します。
核性近視は加齢によって水晶体の核が硬化することで屈折力が強くなる近視で、30歳以降に現れます。
軸性近視は『眼軸』と呼ばれる目の軸が通常より長いことに起因し、角膜または水晶体から網膜までの距離が遠いために網膜より手前にピントが合ってしまう近視です。
眼軸が長い理由は遺伝の影響が強いといわれていますが、正確な理由は不明です。
眼軸長が成長とともに伸びて近視が進行していくため子どもに多く、成長が止まると近視の進行も止まると考えられています。
オルソケラトロジーが効果があるのは主に軸性近視です。
オルソケラトロジーのメリットと効果
寝ている間にレンズを装用することで近視を矯正できるオルソケラトロジーですが、具体的にはどのようなメリットや効果があるのでしょうか?
オルソケラトロジーのメリットと効果を紹介します。
昼間は裸眼で過ごせる
オルソケラトロジーの近視矯正では、昼間は視力が改善された状態のまま、裸眼で過ごすことが可能です。
例えば昼間メガネを必要とする煩わしさがなく、メガネ使用が向かないスポーツや仕事もメガネをかけずに行えます。
1週間程度の装用で充分な視力を得られ、レンズを外した後の効果は8〜36時間と、日中を裸眼で過ごすには十分な持続時間です。
装用していても見える
オルソケラトロジーのレンズは装用中も見えるため、夜中のトイレにメガネがいりません。わざわざレンズを外す必要もありません。
そのため昼間の装用も問題はありませんが、日中に使用する場合は多少調整が必要となるため担当医に相談が必要です。
またその場合は、通常のコンタクトレンズを勧められる場合があります。
侵襲性がない
オルソケラトロジーはハードコンタクトレンズの装用で近視矯正をするため手術が必要なく、侵襲性がありません。
レーシックや眼内コンタクトレンズ(ICL)など、近視の外科手術は2種類ありますが、外科的な手術を目に施すのは怖いという人はオルソケラトロジーがおすすめです。
近視進行の抑制効果
オルソケラトロジーは、遺伝的要因と環境要因の両方が関与して発症・進行すると考えられている軸性近視の進行を抑制する効果が期待できます。
軸性近視は近くのものを見る際のピントを網膜上で合わせようとして眼軸が伸びてしまう症状です。
オルソケラトロジーは特殊なレンズで角膜を平坦化し、網膜でピントが合うようにすることで、眼軸の伸長を抑制し、近視の進行を防く効果があると考えられています。
治療前の状態に戻せる
オルソケラトロジーの治療ではレンズの装用をやめた場合、装用期間にもよりますが大体2週間〜1ヶ月程度で治療前の視力に戻ります。
例えば外科手術のレーシックでは、一度角膜を削ると元に戻すことはできません。
オルソケラトロジーの場合は装用をやめるだけで治療前の状態に戻すことができ、メガネやコンタクトレンズに戻すことも、違う治療方法に変更することも可能です。
子どもでも治療が可能
オルソケラトロジーはレーシックとは異なり、年齢制限がありません。
おおよその対象年齢は6〜65歳程度となっており、子どもでも治療が可能です。
子どもの近視の場合、特に6歳あたりから眼軸が急速に伸びてきます。
特に若いと効果が出やすいため、6歳以前でも近視を疑う場合は早めに眼科を受診して、できるだけ早く治療を開始しましょう。
オルソケラトロジーのデメリットや副作用
侵襲性がないとはいえ、治療を検討するには副作用やデメリットも知っておく必要があります。
オルソケラトロジーのデメリットや副作用を紹介します。
レンズケアが必要
オルソケラトロジーのレンズは通常のコンタクトレンズ同様、不衛生になると感染症のリスクがあるため、装用前後のレンズケアが必要です。
しかし子どもの近視治療の場合、子どもだけではレンズの管理は難しいため、保護者の補助が不可欠です。
医療機関に正しいケアの方法や装用の指導を受けて、正しく取り扱いましょう。
定期検診が必要
オルソケラトロジーは外科的手術は必要ありませんが、定期的な検診が必要です。
オルソケラトロジーは治療(装用)開始から1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後に受診し、その後は3ヶ月ごとに定期検診を受けます。
定期検診では、快適に装用できているか、目に傷がついていないか、装用時のレンズの位置確認・視力検査などを行います。
また、適切な近視矯正を続けるためには度数の調整が必要です。視力に合ったレンズを装用して治療できるよう、しっかり検診を受けましょう。
効果が出るまで日数がかかる
近視が軽度の場合は装用の数時間後でも効果を実感できますが、中等度以上では効果を感じるまで1〜2週間程度かかる場合もあります。
近視度数が強い場合はレンズ交換が数回必要になることや、視力の安定に1ヶ月以上かかる場合もあるなど、個人差があります。
装用後数日は見えたり見えなかったりすることもあります。見え方が安定するまで医師の指示に従い、しばらく様子を見ましょう。
毎晩装用する・6時間以上の就寝が必要
オルソケラトロジーのレンズは基本的には毎日就寝中に6時間以上装用する必要があります。
治療を開始してある程度日数が経つと、1日くらい装用を忘れても角膜はすぐには戻りませんが、角膜は柔らかいため、徐々に近視の視力の頃の形に戻っていきます。
しかし、装用をやめることで元に戻せることは、オルソケラトロジーのメリットでもあります。
合併症の危険性がある
オルソケラトロジーで使用するレンズは通常のハードコンタクトレンズと同様、角膜感染症のリスクがあります。
また、レンズの形状が特殊であるため洗浄が不十分になりやすいのがデメリットです。
角膜感染症の中には視力低下したり失明につながったりする重篤なものも含まれるため、充血や違和感・痛みがある場合は早急に受診し、装用を休む・治療するなどが必要です。
朝は忙しい時間帯ですが、外した後のレンズはしっかり洗浄し、レンズケースは夜装用後に洗浄ししっかり乾燥させるなど、清潔を保つよう習慣づけましょう。
中等度以上の近視には結果が出にくい
オルソケラトロジーのレンズは、中等度以上の近視や乱視に対しては1.2以上の視力が出にくいため、対応できない場合があります。
近視は『D(ディオプター)』という単位で表しますが、軽度近視を-0.5D〜-3.0D未満として、オルソケラトロジーで適応が可能な近視は-4.00Dまでの中等度です。
眼軸の伸長に対しては全く効果がないわけではありませんが、メガネや通常のコンタクトレンズのようにはいかないことに留意し、検討が必要です。
ハロー・グレア
オルソケラトロジーで治療している場合、夜間や暗い所で電灯などの光が周りに散って眩しさを感じるハロー・グレア現象が見られる場合があります。
子どもには少ない現象ですが、大人が感じやすいといわれているため、運転や仕事などをする場合は事前の確認が大切です。
ハロー・グレア現象は、治療を続けていくうちに慣れて気にならなくなることが多いです。
オルソケラトロジーの費用相場
オルソケラトロジーは基本的に自費診療となるため、クリニックにより費用設定には違いがあります。
一例として、大阪鶴見まつやま眼科での費用を紹介します。
大阪鶴見まつやま眼科で導入しているのは、以下のような定額プランです(税込)。
プラン | 両眼 | 片眼 |
---|---|---|
初期費用 | 50,000円 (2ヶ月分の月額利用料・1年目の定期診察・ 検査代・初回ケア用品代を含む) |
|
月額利用料 | 4,400円 | 7,700円 |
度数・破損交換保証 | 無料(1年ごとに片眼につき2回まで。保証は毎年リセット) | |
紛失・保証外レンズ負担金 | 11,000円/1枚 |
オルソケラトロジーが原因で合併症に罹患した場合、その治療費は自由診療として計算されます。
また、別途費用として以下の負担があります(税込)。
- 適応検査……5,500円
- ケア用品代……別途必要
- 2年目以降の定期検診・検査費用(年4回)……22,000円/1年
オルソケラトロジーの向き・不向き
オルソケラトロジーには向き・不向きがあるため、治療を検討するにあたって適切かどうかを確認することをおすすめします。
最後に、オルソケラトロジーの向き・不向きについて紹介します。
オルソケラトロジーに向いている人
オルソケラトロジーの治療に向いている人は以下の通りです。
- 6歳以上で度合いが中等度(-4D)程度の近視、または軽度の乱視
- 近視を進行抑制したい子ども
- スポーツを裸眼で楽しみたい
- 日常のメガネやコンタクトの装用が煩わしい
- 角膜のカーブが強すぎない・弱すぎない
- 近視の外科的手術が不安
- 希望する職業に視力制限がある
日中を裸眼で過ごせることは、オルソケラトロジーの大きな特徴でありメリットです。
自身の中にどのような理由や条件があるのかを明らかにしたうえで、オルソケラトロジーの治療に踏み出すための検討をしてみましょう。
オルソケラトロジーに向いていない人
オルソケラトロジーは、治療ができない人や、避けた方がいい人・治療をしても結果が出ない可能性がある人がいます。
オルソケラトロジーに向いていない人・おすすめしない人は以下です。
- 円錐角膜
- 重症のドライアイ
- 角膜に疾患がある
- 遠視・強度乱視・不正乱視・老眼
- 妊娠中・授乳中・妊娠の可能性がある
- レーシックやICLなど屈折矯正の外科手術を受けたことがある
- レンズのケアがしっかり行えない(子どもの場合、保護者が行えるかどうか)
- 6時間以上の睡眠時間が取れない
- 目のトラブルや強いアレルギー反応がある
- 定期検査を受けられない
- 職業上適正な視力の安定が求められ、視力変化があった際に業務を中止できない
妊娠におけるホルモンバランスは角膜の形状に影響し、レーシックやICLは角膜の形状が変化してレンズが上手くフィットしないなどの理由で効果が上手く得られない場合があります。
以上に当てはまる場合でも、メガネや通常のコンタクト・点眼薬など、他にも治療の選択肢があるため、医師に相談しましょう。
まとめ
オルソケラトロジーは中等度までの近視の視力矯正治療として有効であり、治療をやめると治療前の状態に戻せて、治療中は裸眼で日中を過ごせるという大きなメリットがあります。
レンズケアの方法や自由診療による治療費などについて事前に確認の上で、しっかり検討しましょう。
大阪鶴見区の医療法人松真会 大阪鶴見まつやま眼科では、少ない負担でオルソケラトロジー治療を始められるよう、定額制プランを導入しています。
お子様の近視抑制は成長期がカギです。オルソケラトロジーが適応かどうかをぜひ一度、お気軽にご相談ください。
Web予約、Lineでの問い合わせも承っております。