
就寝中にコンタクトレンズを装用して近視矯正を行うオルソケラトロジー。日中は裸眼で過ごせるということで、気になっている人もいるでしょう。
オルソケラトロジーに必要な期間がどれくらいなのかということは、検討するにあたって事前に確認しておきたいところです。
この記事では、そもそもオルソケラトロジーがどのような治療なのか、必要な期間やリスク、治療をするにあたって向き不向きがあるのかなどを紹介します。
矯正にかかる期間は、かかる費用をあらかじめ計算したり用意したりするためにも必要な情報です。ぜひ参考にしてください。
オルソケラトロジーとは
オルソケラトロジーはアメリカで30年以上前から研究されてきた治療法で、ヨーロッパのCEマーク認可、米国のFDA認証など、世界64ヶ国で認可されている信頼性のある治療法です。
ここではまず、しくみやメリット、対応年齢など、オルソケラトロジーという治療法について詳しく紹介します。
角膜に圧をかける近視矯正
オルソケラトロジーはナイトレンズとも呼ばれ、寝る前に特殊なハードコンタクトレンズを装用して角膜の形状を変化させ、視力を矯正する近視治療です。
圧迫により平坦化した角膜は、網膜の手前で結ばれてしまうピントを網膜上で結ぶように調整します。
起床時にレンズを外しても角膜の形状をしばらく維持するため、日中は裸眼で過ごせます。
リスクが比較的少ないため、注目を集めている治療法です。
オルソケラトロジーのメリット
オルソケラトロジーには、以下のようなメリットがあります。
- 日中にメガネやコンタクトレンズが要らない
- スポーツやメガネが向かない仕事が安全にできる
- 手術がいらない
- 装着を中止すれば元に戻せる
- 近視進行の抑制効果がある
- 年齢制限がない
手術が必要なく、必要に応じて元に戻すことも可能、近視でも日中を裸眼で過ごせるのは、オルソケラトロジーの大きなメリットといえます。
適応年齢は6〜65歳くらい
2017年に改訂されたオルソケラトロジーガイドラインによると、オルソケラトロジーは年齢制限は事実上ありませんが、未成年に対しては慎重に処方するように定められています。
子どもは角膜が柔らかいため大人に比べると効果が出やすいですが、あまり小さいとレンズ自体が着けられません。
また、老眼が始まるあたりの年齢(45〜50歳)でオルソケラトロジーのレンズを装用すると手元が見えにくくなることがあるため、度数を弱める・使用頻度を控えるなどの対策が必要です。
こういったことから、年齢制限はなくても約6〜65歳を対象とした治療が行われています。
強度の近視には効果がない場合も
オルソケラトロジーの適応範囲は、近視度数が-4.0Dまでの中等度・乱視度数は-1.5 D以下の軽度までであり、それ以上の強度近視(乱視)になると不適応となります。
近視の度数が強くなればなるほど、角膜の形状を大きく変化させなければならないため、限界があります。
また、医師の判断により中等度以上でも治療する場合はありますが、効果が出るまで時間はかかります。
強度近視に対応したレンズも登場していますが、注意事項や高まるリスクがないかどうかなどを事前に確認する必要があります。
やめると元に戻る
オルソケラトロジーは毎晩6時間以上の装用で角膜が矯正されますが、装用をやめると角膜は元に戻ります。
安定して効果が出るようになるには2週間〜1ヶ月程度の毎日の装用が必要であり、視力が安定するまでしばらくかかります。
視力が安定してくると、1日装用し忘れたくらいではすぐには戻らなくなりますが、装用をやめると2週間〜1ヶ月くらいで角膜は矯正前に戻ります。
装用を続けなければ効果は得られませんが、中止することで元に戻すことができ、治療方法の変更も可能です。
費用は自由診療
オルソケラトロジーは自由診療です。
自由診療は保険診療にはない治療の選択肢を自分に合わせて選べることがメリットですが、金額設定はクリニックが自由に決められ、保険適用できないため費用は高めです。
また、本来なら保険適用できるオルソケラトロジーとは関係ない疾患についても、オルソケラトロジーの定期検診や受診と同日に行った場合、保険適用できません。
その場合は自由診療と保険診療を別の日にしましょう。
オルソケラトロジーの必要期間は?
オルソケラトロジーの治療に必要な期間については、関連するさまざまな条件や状況によります。
オルソケラトロジーの治療に必要な期間について紹介します。
効果が見られる時期は年齢や近視度で差がある
オルソケラトロジーは一般的には2週間〜1ヶ月ほど装用を続けると視力が安定してきますが、効果が見られる時期は治療を受ける人の年齢や近視度で差があります。
子どもが治療を受ける場合は角膜が柔らかいこともあり効果が出やすいです。
しかし老眼が始まる45〜50歳くらいの大人の場合、オルソケラトロジーの治療を行うことで手元が見えにくくなる可能性があります。
その場合、レンズの度数を少し弱めにしたり、使用頻度を少なくしたり、片方のみに使用するなど対策が必要になり、十分な効果が出るまで時間がかかる場合もあります。
子どもは成長とともにやめられる場合がある
子どもの近視は成長と共に進行するため、進行が緩やかになる思春期頃(15〜18歳)までの治療の継続が推奨されています。
一方、大人のオルソケラトロジーの場合、近視の進行はすでに進んでいるため抑制効果は望めませんが、日常生活に必要な視力を保つことは可能です。
ではいつまでその視力を維持するのかについては、長期に渡って続けることを考えた場合の負担を考えると、レーシックやICLを検討するのも一つの選択肢となります。
また、子どもの場合も近視が進行して適応範囲を越えると、治療が続けられなくなる場合があります。
治療期間中は費用がかかる
オルソケラトロジーの治療費用については、健康保険の高額療養費は利用できませんが、確定申告の際の医療費控除の対象になります。
他にも、一括払いでは近視の進行が止まっていてレンズ交換回数が少ない分の費用が抑えられ、定額制では初期費用の軽減やレンズ保証が手厚いなど、料金体系も工夫されています。
オルソケラトロジーのリスク
ここでは、オルソケラトロジーのリスクについて紹介します。
リスク管理が重要
オルソケラトロジーは世界各国での治療の歴史がある治療法ですが、日々のケアや取り扱いについて、しっかりしたリスク管理が必要です。
オルソケラトロジーのレンズはリバースカーブと呼ばれる溝のようなカーブが内側にある特殊な形状をしており、底に汚れが溜まりやすくなっています。
レンズの装脱の度に手を洗う、爪を切ってやすりをかけてレンズに傷をつけないようにするなど、取り扱いには注意が必要です。
治療を開始する際はクリニックで専用のケア用品が用意され、取り扱いの指導もきちんと行われます。
オルソケラトロジーのレンズは医療機器のためしっかりリスク管理して、トラブルのないように治療をすすめることが大切です。
オルソケラトロジーの副作用
オルソケラトロジーには以下のような副作用があります。
- ハロー・グレア現象……夜間に光が散って見える
- しばらく視力が安定しない……装用開始時は夕方辺りから見えにくくなることも
このような副作用は治療を続けて1ヶ月もすれば安定することがほとんどですが、それまでは安全のために車の運転や機械作業を控えた方がいいでしょう。
オルソケラトロジーの合併症
オルソケラトロジーは通常のハードコンタクトレンズと同様の、合併症のリスクがあります。
予想される合併症は以下の通りです。
- 角膜炎・角膜上皮障害
- 角膜内皮障害
- 巨大乳頭結膜炎
オルソケラトロジーで失明する確率は極めて低いですが、合併症が重症化すると視力低下や失明を引き起こす危険性はゼロではありません。
このような合併症を引き起こさないよう、正しいレンズケアを行いましょう。
合併症がある場合の治療費も自費
オルソケラトロジーの治療で合併症を引き起こした場合の治療費は、オルソケラトロジーの治療同様、自由診療になります。
同日に診察を受けてもどちらも自由診療のため問題はありませんが、正しいレンズケアと取り扱いで防げる合併症の支払いが高くかかるのはできれば避けたい事態です。
定期検診を決められた頻度(3ヶ月に1回)で受けていると、早期発見につながります。医師の指示に従って、定期検診は毎回しっかり受けましょう。
オルソケラトロジーに向いている人
オルソケラトロジーは治療期間が一般的に長くかかるため、治療を開始する前に向いているかどうかを確認してみましょう。
オルソケラトロジーの治療に向いている人を紹介します。
近視度数が中等度以下
オルソケラトロジーの適応は、一般的には近視度数が中等度、乱視度数は軽度までです。
それ以上の度数で、それでもオルソケラトロジーを検討したいと思っている人は、一度専門医に相談してみましょう。
激しいスポーツをする・職業上メガネが不便な人
オルソケラトロジーは日中に裸眼で過ごすことが可能であるため、激しいスポーツを楽しみたい人や、職業上メガネをかけることを不便に思っている人は、ぜひ検討してみましょう。
例えば、格闘技や水泳をする場合はコンタクトレンズやメガネより裸眼が理想的でしょう。
パソコン仕事や夜勤など長時間のメガネやコンタクトの装用が目に負担をかける仕事も、裸眼が望ましいでしょう。
目の矯正はしたいけど、日中は裸眼がいいという人はオルソケラトロジーが向いています。
手術をしたくない
視力矯正はしたいけれど手術はしたくない人は、侵襲性のないオルソケラトロジーを検討してみましょう。
オルソケラトロジーはコンタクトレンズの装用だけで視力が矯正できるため、手術に恐怖心や不安がある人にもおすすめです。
近視の進行を抑えたい
子どもの近視の進行を抑制したい場合、親が管理することで小学校低学年の子どもでもオルソケラトロジーの治療を受けられます。
角膜がやわらかい子どもの頃から治療できれば、近視の進行を抑制でき、さらに日中を裸眼で過ごせます。
近視の進行抑制は、治療開始が早ければ早いほどいいため、近視に気付き次第眼科を受診して相談しましょう。
重症のドライアイや目の疾患がない人
オルソケラトロジーのレンズは患者さんの目に直接装用するため、重症のドライアイの人や目の疾患がある人が治療を行うと、合併症を引き起こす可能性があります。
もしオルソケラトロジーの治療を受けたいと思っている人が上記のような目の状態である場合、保険負担で治療をしてからオルソケラトロジーの検討をした方がいいでしょう。
オルソケラトロジーが向いていない人
オルソケラトロジーが向いている人は紹介しましたが、向いていない人もいます。
オルソケラトロジーが向いていない人は以下の通りです。
- レーシックを受けたことがある(長期間の経過後でも受けられない)
- 妊娠中・授乳中・または妊娠予定の人(ホルモンバランスによって角膜の形状が変わるため)
- 円錐角膜の人(眼疾患がある人は不適合)
- 重症のドライアイの人(軽度ならOK)
- 治療中のケアがきちんとできない人(レンズやレンズケース)
- 定期検査に通えない人(3ヶ月に1回の頻度は必須)
- 視力に変化があると不都合な人(仕事に影響がある、視力の安定が必須など)
他にも、徹夜が多い人や睡眠時間が短い人は向いていません。オルソケラトロジーは1日6時間以上の装用が必要となるためです。
まとめ
オルソケラトロジーの治療に必要な期間は以下です。
- 子どもは近視の進行が緩やかになるまで
- 大人はいつまで日中の視力を保ちたいか
オルソケラトロジーは毎日の装用を継続することで効果が得られる治療法です。
治療を始めるか、いつまで続けるかについてもし迷ったら専門医に相談するのがおすすめです。
医療法人松真会 大阪鶴見まつやま眼科ではオルソケラトロジーの治療経験が豊富な処方実績を持ち、お子様への対応として小児科を得意とする視能訓練士が在籍しています。
オルソケラトロジーの治療について分からないこと、迷うことがございましたら、ぜひ一度ご相談ください。
Web予約やLINEでのお問い合わせをお待ちしております。