光がまぶしい

光がまぶしい

「晴れた日の屋外だと、目が開けられないほどまぶしい」
「夜、対向車のヘッドライトがギラギラと乱反射して見えにくい」
「以前より、室内の照明がやけに明るく感じる」

このように、通常では問題ないはずの光を不快に感じたり、まぶしく感じたりする症状を、医学的には「羞明(しゅうめい)」と呼びます。「もともと光に弱い体質だから」と自己判断している方もいらっしゃいますが、もし以前よりもまぶしさを強く感じるようになった場合、その背後には目の病気が隠れている可能性があります。

「光がまぶしい」という症状は、目からの重要なSOSサインです。放置すると、原因となっている病気が進行し、視力に影響を及ぼすことも少なくありません。

この記事では、光のまぶしさでお悩みの患者さんに向けて、眼科専門医の立場から以下の内容を詳しく、そして分かりやすく解説していきます。

  • なぜ「まぶしさ」を感じるのか?そのメカニズム
  • 目の手前側(角膜・水晶体)が原因で起こるまぶしさ
  • 目の奥側(ぶどう膜・網膜)が原因で起こるまぶしさ
  • 眼科を受診すべき、危険な「まぶしさ」のサイン
  • 眼科で行われる検査と、原因ごとの治療法

この記事を最後までお読みいただくことで、ご自身の症状への理解が深まり、適切な対処の第一歩を踏み出すことができます。

目次

なぜ「光がまぶしい」と感じるのか?

光がまぶしい

「まぶしさ」を感じるメカニズムは、大きく分けて2つあります。

  1. 目の中に入る光の量そのものが多い:
    目には、カメラの「絞り」のように光の量を調節する「虹彩(こうさい)」があります。何らかの原因で虹彩の動きが悪くなると、明るい場所でも瞳孔が十分に縮まらず、必要以上の光が目の中に入ってしまい、まぶしさを感じます。
  2. 目の中で光が散乱(乱反射)している:
    本来は透明であるべき目の組織(角膜や水晶体)が濁ったり、表面が荒れたりすると、そこを通過する光が正しく屈折せずに散乱してしまいます。散乱した光は網膜の広い範囲を刺激するため、ギラギラとしたまぶしさ(グレア)として感じられます。

これらの異常を引き起こす、代表的な目の病気について見ていきましょう。

考えられる原因①【目の手前側:角膜・水晶体の異常】

光の通り道である、目の手前側(前方)に問題がある場合、光の散乱による「まぶしさ」が起こりやすくなります。

白内障

加齢とともに現れる「まぶしさ」の最も代表的な原因です。目の中のレンズである「水晶体」が濁る病気で、濁った水晶体が光を乱反射させるため、特に夜間の対向車のライトや、太陽光が非常にまぶしく感じるようになります。視界がかすむ、物が二重に見えるといった症状も伴います。治療は、濁った水晶体を取り除き、人工の眼内レンズを挿入する手術を行います。

ドライアイ

涙の量が不足したり、涙の質が悪くなったりすることで、目の表面が乾く病気です。涙の膜(涙液層)が不安定になると、目の表面が滑らかでなくなり、光が不規則に反射してしまいます。その結果、「目が乾く」「ゴロゴロする」といった症状だけでなく、「光がまぶしい」「目が疲れやすい」といった症状も引き起こします。治療は、目に潤いを与える点眼薬や、涙の質を改善する点眼薬などで行います。

角膜炎・角膜びらん

角膜(黒目)に炎症や傷がついている状態です。角膜の表面が荒れるため、光が散乱し、強いまぶしさを感じます。目の痛みや充血、涙が止まらないといった症状を伴うことが多く、コンタクトレンズの不適切な使用や感染症、異物などが原因となります。原因に応じた点眼薬による治療が急務です。

円錐角膜

角膜が薄くなり、前方へ円錐状に突出してくる進行性の病気です。角膜の形が歪むため、不正乱視が強くなり、物が歪んで見えると共に、強いまぶしさを感じるようになります。進行を抑えるための治療や、専用のコンタクトレンズによる矯正が必要です。

考えられる原因②【目の奥側:ぶどう膜・網膜の異常】

目の奥に炎症などがある場合、光そのものに対する過敏性が高まり、「まぶしさ」を感じます。

ぶどう膜炎

目の中に炎症が起こる病気の総称です。光の量を調節する虹彩にも炎症が及ぶことが多く、その動きが悪くなるため、強いまぶしさを感じます。目の痛みやかすみ、飛蚊症(黒い点が飛ぶ)などを伴うことが多く、背景に全身の病気が隠れていることもあるため、専門的な診断と治療が必要です。

網膜の病気(網膜色素変性症など)

網膜は光を感じる神経の膜ですが、この網膜の機能に異常が生じる病気(網膜ジストロフィーなど)でも、羞明が初期症状として現れることがあります。特に、暗いところで見えにくくなる「夜盲症」から始まる網膜色素変性症では、多くの患者さんが強いまぶしさを訴えます。

その他:片頭痛や薬の副作用など

目の病気以外にも、片頭痛の前兆として、ギザギザした光(閃輝暗点)と共に強いまぶしさを感じることがあります。また、一部の薬の副作用や、脳の病気によって羞明が起こることもあります。

【要注意】すぐに眼科を受診すべき危険な「まぶしさ」

「光がまぶしい」という症状に加えて、以下のような症状が見られる場合は、重篤な病気のサインかもしれません。様子を見ずに、速やかに眼科を受診してください。

  • 急に、これまでにない強いまぶしさを感じるようになった
  • 目の強い痛み、頭痛、吐き気を伴う
  • 急激な視力低下や、かすみを伴う
  • 目の強い充血を伴う
  • 黒い点やゴミのようなものがたくさん見える(飛蚊症)症状が急に現れた

当院での検査と治療

大阪市鶴見区の大阪鶴見まつやま眼科では、「光がまぶしい」という症状で受診された場合、原因を特定するために、まずは丁寧な問診と基本的な視力・眼圧検査を行います。その後、「細隙灯顕微鏡検査」で、角膜や水晶体など、目の手前側の状態を詳細に観察します。

目の奥の病気が疑われる場合は、瞳孔を開く目薬(散瞳薬)を点眼し、「眼底検査」で網膜や視神経の状態を詳しく調べます。これらの検査結果を総合的に判断し、原因となっている病気を突き止め、それぞれに最適な治療法(点眼薬、手術など)を選択します。

病気ではない場合でも、サングラスや遮光眼鏡(まぶしさの原因となる特定の波長の光をカットする特殊なレンズ)の使用など、症状を和らげるためのアドバイスを行います。

まとめ:「まぶしさ」は、目の異常を知らせるサインです

光をまぶしいと感じる原因は、単純な疲れ目から、治療が必要な目の病気まで、非常に多岐にわたります。

【この記事のポイント】

  • 光がまぶしい症状を「羞明」と呼ぶ。
  • 主な原因は、目の濁りや表面の荒れによる「光の散乱」
  • 加齢に伴う場合は「白内障」、目の乾きもあれば「ドライアイ」の可能性が高い。
  • 目の痛みや視力低下を伴う場合は、重篤な病気の可能性があり、すぐに眼科受診が必要。
  • 正しい原因を特定するには、眼科での精密な検査が不可欠。

以前と比べて「光がまぶしい」と感じるようになったら、それはあなたの目が何らかの異常を訴えているサインです。
自己判断で様子を見たり、市販の目薬でごまかしたりせず、ぜひ一度、眼科専門医にご相談ください。
原因を正確に突き止め、適切に対処することが、あなたの目の健康と快適な視覚を守るための最も確実な方法です。

光がまぶしい よくあるご質問(Q&A)

光がまぶしいという症状(羞明)について、患者さんからよく寄せられるご質問とその回答をまとめました。ご自身の症状と照らし合わせ、不安の解消にお役立てください。

夜間の運転中、対向車のライトが特にまぶしく感じます。年のせいでしょうか?

夜間の運転で対向車のライトが以前よりギラギラと眩しく感じたり、光が伸びて見えたりする場合、最も考えられる原因の一つに「白内障」があります。
白内障は、目の中のレンズ(水晶体)が加齢とともに濁る病気です。濁った水晶体は、入ってきた光を乱反射させてしまうため、特に夜間の強い光に対して強いまぶしさを生じさせます。
また、矯正されていない「乱視」が原因で、光がにじんで見えることもあります。
いずれにせよ、「年のせい」と片付けずに、一度眼科で目の透明度や乱視の状態を詳しく調べてもらうことをお勧めします。

今まで平気だったのに、急に光がまぶしいと感じるようになりました。すぐに受診すべきですか?

はい、急に現れた強いまぶしさは、目に何らかの炎症が起きているサインの可能性があるため、早めに眼科を受診してください。
考えられる原因としては、目の中に炎症が起こる「ぶどう膜炎」や、黒目(角膜)に傷や感染が起こる「角膜炎」などがあります。これらの病気は、早期に治療を開始しないと視力に影響を及ぼすことがあります。
特に、強い目の痛みや充血、急激な視力低下を伴う場合は、緊急性の高い病気の可能性もあります。
症状が急に現れた場合は、様子を見ずに専門医の診断を仰ぐことが大切です。

目が乾く感じもするのですが、ドライアイとまぶしさは関係ありますか?

はい、非常に深い関係があります。ドライアイは、まぶしさを引き起こす非常に多い原因の一つです。
私たちの目の表面は、涙が作る滑らかな膜(涙液層)で覆われており、これが光をきれいに透過させています。
しかし、ドライアイになると涙の膜が不安定になり、目の表面がデコボコになります。この不均一な表面が、入ってきた光を乱反射させてしまい、ギラギラとしたまぶしさ(グレア)として感じられるのです。
実際に、「まぶしい」と訴える患者さんを診察すると、重度のドライアイが見つかるケースは少なくありません。
ドライアイをしっかり治療することで、まぶしさが軽減することも期待できます。

まぶしさを和らげるために、日常生活でできる対策はありますか?

原因となっている病気の治療が第一ですが、日常生活でまぶしさを和らげる工夫も有効です。屋外では、UVカット機能のあるサングラスや、つばの広い帽子、日傘などを活用し、目に入る光の量を物理的に減らしましょう。
レンズの色が濃いほど光を遮る効果は高いですが、あまり濃すぎると瞳孔が開いてしまい、かえって紫外線を取り込みやすくなることもあるため、UVカット率の高いものを選ぶことが重要です。
室内では、照明を直接目に入れない間接照明にしたり、パソコンやスマートフォンの画面の輝度を適切に調整したりすることも効果的です。

コンタクトレンズを着けていると、特に光がまぶしく感じます。なぜですか?

コンタクトレンズ装用中にまぶしさを感じる場合、いくつかの原因が考えられます。
まず、コンタクトレンズの装用によってドライアイが悪化し、涙の膜が乱れて光が散乱している可能性です。
また、レンズの表面に付着したタンパク質や脂質の汚れが、光を乱反射させていることもあります。
さらに、レンズのカーブが目に合っていなかったり、酸素不足で角膜がむくんだり(角膜内皮障害)、角膜に細かい傷がついていたりする場合も、まぶしさの原因となります。
いずれにせよ、コンタクトレンズが目に負担をかけているサインですので、我慢せずに眼科でレンズの種類や度数、目の健康状態をチェックしてもらうことが重要です。

片方の目だけが、特にまぶしく感じます。何か考えられる原因はありますか?

片方の目だけにまぶしさを感じる場合、その目自体に何らかの局所的な問題が起きている可能性が高いです。
例えば、目にゴミが入って角膜に傷がついていたり、片方の目だけにぶどう膜炎などの炎症が起きていたりすることが考えられます。
また、白内障の進行具合に左右差がある場合、より進行している方の目が強くまぶしさを感じることがあります。
まれに、脳の病気が原因で片側の見え方に異常が出ることもあります。
両目ではなく片目だけ、という症状は重要なサインですので、必ず眼科を受診して原因を特定するようにしてください。

目次