「目が真っ赤に充血している」
「朝起きると、目やにで目が開けにくい」
「目がかゆくて、こすらずにはいられない」
こうした目の不快な症状、多くの方が一度は経験したことがあるのではないでしょうか。その原因は、目の代表的な病気の一つである「結膜炎」かもしれません。
「結膜炎」と一言でいっても、実はその原因は一つではありません。原因によって「人にうつるもの」と「うつらないもの」があり、治療法も全く異なります。自己判断で市販の目薬を使ってしまうと、症状が改善しないばかりか、かえって悪化させてしまう可能性もあるため注意が必要です。
この記事では、目の症状でお悩みの患者さんに向けて、眼科専門医の立場から以下の内容を詳しく、そして分かりやすく解説していきます。
- そもそも結膜炎とは何か?
- 人にうつる?原因別の3つのタイプ(アレルギー性・ウイルス性・細菌性)
- それぞれの結膜炎の特徴的な症状と見分け方
- 原因に応じた正しい治療法と、家庭での注意点
この記事を最後までお読みいただくことで、ご自身の症状への正しい知識が身につき、適切な対処法が明確になります。
つらい症状から一日でも早く回復するために、ぜひご一読ください。
そもそも結膜炎とは?
結膜炎とは、その名の通り「結膜」に炎症が起きた状態を指します。結膜とは、まぶたの裏側と、白目の部分(強膜)を覆っている薄くて透明な粘膜のことです。
結膜には、目に涙を行き渡らせて乾燥を防いだり、外部から侵入してくる異物や病原体から目を守るバリアのような大切な役割があります。この結膜が、アレルギーの原因物質(アレルゲン)や、ウイルス・細菌などに反応して炎症を起こし、充血やかゆみ、目やになどの症状を引き起こすのが結膜炎です。
3つの結膜炎|症状と「うつる・うつらない」の違い
結膜炎は、原因によって大きく3つのタイプに分けられます。それぞれの特徴を正しく理解することが、適切な治療への第一歩です。
1. アレルギー性結膜炎
【原因】
花粉(スギ、ヒノキなど)、ハウスダスト、ダニ、カビ、ペットの毛など、アレルギー反応を引き起こす物質(アレルゲン)が目に入ることで発症します。
【主な症状】
- 強い目のかゆみ
- サラサラとした水のような涙や目やに
- 目の充血、ゴロゴロ感
- まぶたの腫れ
季節性のもの(花粉症)と、一年中症状が見られる通年性のもの(ハウスダストなど)があります。鼻水やくしゃみなど、アレルギー性鼻炎の症状を伴うことも多いのが特徴です。
【感染力】
アレルギー反応による炎症なので、人にうつることはありません。
2. ウイルス性結膜炎
【原因】
アデノウイルスやエンテロウイルスなどのウイルスに感染することで発症します。感染力が非常に強く、注意が必要です。
【主な症状】
- 強い目の充血
- サラサラとした涙状の目やに
- 目のゴロゴロ感、痛み
- 耳の前にあるリンパ節の腫れや痛み(ウイルス性を見分ける重要なサイン)
代表的なものに、俗に「はやり目」と呼ばれる流行性角結膜炎や、「プール熱」として知られる咽頭結膜熱があります。
【感染力】
感染力が非常に強いです。涙や目やにに含まれるウイルスが、手指を介して他の人や自分の反対の目に感染を広げます。
3. 細菌性結膜炎
【原因】
黄色ブドウ球菌やインフルエンザ菌、肺炎球菌などの細菌に感染することで発症します。子供や高齢者、体力が落ちている時にかかりやすい傾向があります。
【主な症状】
- ドロっとした膿のような黄色い目やに(朝、目やにで目が開けにくくなることが多い)
- 目の充血
- ゴロゴロ感
ウイルス性と比べて、かゆみや痛みは比較的軽いことが多いのが特徴です。
【感染力】
人にうつることがあります。ウイルス性ほど強力ではありませんが、目やにを触った手で物を介して感染する可能性があります。
人にうつさない・うつされないために
ご自身やご家族がウイルス性結膜炎(はやり目)と診断された場合は、感染を広げないために以下のことを徹底してください。
- 流水と石鹸で、こまめに手を洗う
- 目を触らない、こすらない
- タオルや枕、目薬などを家族と共有しない
- お風呂は最後に入るか、シャワーで済ませる
- コンタクトレンズの使用を中止する
- 医師の許可が出るまで、学校や仕事(特に人と接する職種)は休む
当院で行う治療法|原因によって全く異なります
結膜炎の治療は、原因となっているタイプを正確に診断し、それぞれに合った目薬(点眼薬)を使うことが基本となります。
アレルギー性結膜炎の治療
症状を抑えるための抗アレルギー点眼薬が中心となります。かゆみを直接抑える「抗ヒスタミン薬」や、アレルギー反応自体を起きにくくする「メディエーター遊離抑制薬」などを使用します。炎症が非常に強い場合は、ステロイド点眼薬を短期間使うこともあります。
ウイルス性結膜炎の治療
残念ながら、アデノウイルスなどに直接効く「抗ウイルス薬」の点眼はありません。そのため、治療はつらい症状を和らげることが中心となります。炎症を抑えるための非ステロイド性抗炎症点眼薬や、細菌の混合感染を防ぐための抗菌点眼薬を使用します。目の表面(角膜)にまで炎症が広がり、視力に影響が出る可能性がある場合は、慎重にステロイド点眼薬を使用します。
細菌性結膜炎の治療
原因となっている細菌を殺菌するための、様々な種類の抗菌点眼薬(抗生物質の目薬)を使用します。適切な目薬を使えば、通常は数日〜1週間程度で症状は改善します。
【注意】
自己判断で、以前もらった抗菌点眼薬などを安易に使うのは大変危険です。ウイルス性結膜炎に抗菌点眼薬は効きませんし、症状に合わない薬は副作用のリスクもあります。必ず眼科を受診し、正しい診断のもとで処方された薬を使用してください。
まとめ:目の充血・目やには、まず眼科へご相談ください
今回は、身近な目の病気である「結膜炎」について、その原因と治療法を解説しました。
【この記事のポイント】
- 結膜炎には、アレルギー性、ウイルス性、細菌性の3つの主要なタイプがある。
- 強いかゆみがあればアレルギー性、リンパ節の腫れがあればウイルス性、黄色い膿のような目やにが出れば細菌性を疑うが、自己判断は禁物。
- ウイルス性結膜炎(はやり目)は非常に感染力が強く、家庭や職場、学校での感染対策が必須。
- 治療法は原因によって全く異なり、眼科での正確な診断が最も重要。
目が赤い、目やにが出る、といった症状は、結膜炎以外の重篤な目の病気(ぶどう膜炎、急性緑内障発作など)のサインである可能性もゼロではありません。特に、強い痛みや急激な視力低下を伴う場合は、すぐに眼科を受診してください。
鶴見区今福鶴見の大阪鶴見まつやま眼科では、結膜炎の患者さんの症状を丁寧に診察し、原因を的確に診断した上で、最適な治療法をご提案いたします。気になる症状があれば、どうぞお気軽に専門医にご相談ください。