眼瞼下垂

眼瞼下垂

「まぶたが重くて、目が開けにくい」
「周りからよく『眠そうだね』『疲れている?』と言われる」
「無意識におでこにシワを寄せて、あごを上げて物を見ている」
「夕方になると頭痛や肩こりがひどくなる」

このようなお悩み、単なる加齢や疲れのせいだと思っていませんか?
もしかしたらその症状、まぶたの病気である「眼瞼下垂」が原因かもしれません。

眼瞼下垂は、見た目の印象だけでなく、視野が狭くなる、頭痛や肩こりを引き起こすなど、日常生活の質(QOL)に大きく関わる疾患です。しかし、適切な治療、特に手術によって改善が期待できる病気でもあります。

この記事では、まぶたの下がりでお悩みの患者さんに向けて、眼科専門医の立場から以下の内容を詳しく、そして分かりやすく解説していきます。

  • 眼瞼下垂がなぜ起こるのか?まぶたが下がる仕組み
  • ご自身でできる、眼瞼下垂のセルフチェック
  • 加齢だけじゃない、眼瞼下垂の様々な原因
  • 保険適用で行える、眼瞼下垂の手術と治療法

この記事を最後までお読みいただくことで、眼瞼下垂への正しい知識が身につき、長年のお悩みを解決するための第一歩を踏み出すことができます。見た目も機能も、すっきりと改善させましょう。

目次

眼瞼下垂とは?まぶたを持ち上げる筋肉のトラブル

眼瞼下垂とは、上まぶた(上眼瞼)が正常な位置より下がってしまい、瞳孔(黒目)の一部が隠れてしまう状態を指します。
これにより、目を開けにくくなったり、視野の上方が見えづらくなったりします。

この原因は、上まぶたを持ち上げる「眼瞼挙筋」という筋肉や、その先端にある「挙筋腱膜」という薄い膜の異常にあります。

正常な状態では、眼瞼挙筋が収縮すると、挙筋腱膜を介してまぶたの先端にある「瞼板」という軟骨が引き上げられ、目がパッチリと開きます。しかし、この挙筋腱膜が伸びてしまったり、瞼板から外れてしまったりすると、筋肉の力がまぶたにうまく伝わらず、十分に目を開けることができなくなってしまうのです。

「たるみ」との違い

よく混同されるものに、加齢による皮膚の「たるみ」(眼瞼皮膚弛緩症)があります。これは、眼瞼挙筋の働きは正常ですが、まぶたの皮膚が伸びて余り、覆いかぶさってくる状態です。眼瞼下垂と皮膚のたるみが合併していることも多く、正確な診断には専門医の診察が不可欠です。

これって眼瞼下垂?症状セルフチェック

ご自身が眼瞼下垂の可能性があるかどうか、以下の項目をチェックしてみましょう。

  • 上まぶたが下がってきて、黒目の一部が隠れている
  • 眠そう、疲れている、目つきが悪い、といった印象に見られることが多い
  • 以前より目が小さくなった、二重の幅が広くなった、または三重になった
  • 物を見るとき、無意識にあごを上げる癖がある
  • 眉毛を上げて目を開けるため、おでこに深いシワが寄っている
  • 慢性的な頭痛(特に額やこめかみ)や、ひどい肩こりに悩んでいる
  • 夕方になると、目の上がくぼんで見える
  • ハードコンタクトレンズを長年使用している

特に、おでこの筋肉(前頭筋)を使って眉毛を上げることで、無意識にまぶたの下がりを補っている方は非常に多いです。これにより、筋肉の過緊張が頭痛や肩こりを引き起こしているケースが少なくありません。

眼瞼下垂の主な原因

眼瞼下垂は、生まれつきのものと、成長してから発症するものに分けられます。

1. 先天性眼瞼下垂

生まれつき眼瞼挙筋の発達が不十分なために起こります。まぶたが瞳孔を覆ってしまうような重度の場合は、視力の発達を妨げ「弱視」の原因になるため、早期の手術が必要です。

2. 後天性眼瞼下垂

後天性の原因で最も多いのが、「腱膜性眼瞼下垂」です。これは、加齢や外部からの刺激によって、前述の「挙筋腱膜」が伸びたり、瞼板から外れたりしてしまう状態です。主な要因は以下の通りです。

  • 加齢:最も多い原因です。長年のまばたきなどで、少しずつ腱膜がゆるんできます。
  • ハードコンタクトレンズの長期装用:レンズの着脱時にまぶたを引っ張ることや、レンズそのものの機械的な刺激が腱膜に負担をかけます。
  • 目をこする癖:アレルギー(花粉症)やアトピー性皮膚炎などで、頻繁に目をこする習慣があると、腱膜が伸びやすくなります。
  • アイメイク:つけまつ毛の着脱なども、まぶたへの負担となります。

その他、筋肉の病気(重症筋無力症など)や神経の麻痺、まぶたの腫瘍などが原因で起こることもあります。

眼瞼下垂の治療の基本は手術

残念ながら、点眼薬やトレーニングで眼瞼下垂を治すことはできません。ゆるんだ筋肉や腱膜を物理的に修復する必要があるため、治療の基本は手術となります。

眼瞼下垂の手術は、見た目を美しくする美容整形という側面だけでなく、「視野を広げる」「頭痛や肩こりを解消する」といった機能的な改善を目的とした、医学的に必要な治療です。

手術方法:挙筋腱膜前転術

後天性眼瞼下垂で最も一般的に行われる手術です。局所麻酔下で、以下のような手順で行います。

  1. 二重のラインなどに沿って皮膚を切開します。
  2. ゆるんだり外れたりしている挙筋腱膜を探し出します。
  3. 挙筋腱膜をまぶたの軟骨である瞼板に、適切な位置で再度縫い付けて固定します。
  4. 目の開き具合を丁寧に確認しながら調整し、皮膚を縫合します。

手術は通常、日帰りで行うことができ、所要時間は両眼で60分〜90分程度です。

眼瞼下垂の手術は保険が適用されます

患者さんから最も多くいただく質問の一つが、費用についてです。眼瞼下垂によって「視野が狭くなっている」「まぶたが瞳孔にかかっている」など、日常生活に支障が出ていると医師が診断した場合、その治療目的の手術は健康保険の適用対象となります。

「美容整形は高額だから」と諦めていた方も、機能的な改善を目的とした治療であれば、自己負担を抑えて手術を受けることが可能です。まずは診察で、ご自身の状態が保険適用の対象となるかを確認することが大切です。

まとめ:まぶたの悩み、専門医に相談してみませんか?

眼瞼下垂は、単に「老けて見える」という美容上の問題だけでなく、頭痛や肩こり、眼精疲労など、全身の不調につながる可能性のある病気です。

【この記事のポイント】

  • 眼瞼下垂は、まぶたを上げる筋肉の腱膜がゆるむことで起こる。
  • 見た目だけでなく、視野障害や頭痛・肩こりなどの機能的な問題を引き起こす。
  • 加齢のほか、ハードコンタクトの長期使用や目をこする癖も原因になる。
  • 治療の基本は手術で、機能改善が目的の場合は保険適用となる。

「まぶたが重いのは年のせい」と我慢しているその症状は、適切な治療で改善できるかもしれません。手術によって、視野が明るく広がるだけでなく、長年悩まされていた頭痛や肩こりが嘘のように楽になった、という患者さんも少なくありません。

鶴見区今福鶴見の大阪鶴見まつやま眼科では、眼瞼下垂の患者さん一人ひとりのまぶたの状態を正確に診断し、機能的にも整容的にもご満足いただけるような、丁寧な診療を心がけております。少しでも気になる症状があれば、どうぞお気軽に眼科専門医にご相談ください。

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