目やに

目やに

「朝起きると、黄色い目やにで目が開けにくい」
「涙のようにサラサラした目やにが止まらない」
「白くてネバネバした糸を引くような目やにが出る」

「目やに」は、誰にでも起こる生理現象の一つです。しかし、普段と違う色や量、粘り気のある目やにが出たとき、それは目からの何らかのサインかもしれません。「たかが目やに」と軽く考えず、その状態をよく観察することが、目のトラブルを早期に発見する手がかりになります。

目やには、その色や性状によって、原因となっている病気をある程度推測することができます。しかし、自己判断で放置したり、市販薬で済ませたりすると、症状を悪化させたり、周囲の人にうつしてしまったりする可能性もあります。

この記事では、目やにの症状でお悩みの患者さんに向けて、眼科専門医の立場から以下の内容を詳しく、そして分かりやすく解説していきます。

  • そもそも「目やに」の正体とは?
  • 【重要】色と粘り気でわかる、目やにの種類と原因
  • 目やにを伴う代表的な目の病気(結膜炎、涙嚢炎など)
  • 赤ちゃんや子供に目やにが多い理由
  • 眼科を受診すべき目やにのサインと治療法

この記事を最後までお読みいただくことで、ご自身の症状への正しい知識が身につき、適切な対処法が明確になります。

目次

そもそも「目やに」とは?正常なものと異常なもの

目やに

目やには、医学的には「眼脂(がんし)」と呼ばれます。その正体は、涙に含まれるムチンというタンパク質、目の表面の古い細胞、外から入ってきたホコリ、涙の油分などが混じり合ってできた、いわば老廃物です。

睡眠中はまばたきをしないため、これらの老廃物が洗い流されず、目の縁や目頭に溜まります。そのため、朝起きた時に、目頭や目尻に少量の乾いた目やにがついているのは、誰にでも起こる正常な生理現象であり、心配する必要はありません。

しかし、以下のような「いつもと違う目やに」が見られる場合は、目のどこかで炎症や感染が起きているサインであり、注意が必要です。

  • 日中も、目やにが頻繁に出る
  • 量が多く、拭いてもすぐに出てくる
  • 色が黄色や緑色がかっている
  • ネバネバ、ドロドロしている

【セルフチェック】目やにの色と粘り気でわかる原因

目やにの状態は、原因を推測する上で非常に重要な手がかりです。ご自身の症状と照らし合わせてみてください。

1. 黄色〜緑色で、ネバネバ・ドロドロしている場合

→ 細菌感染(細菌性結膜炎など)の可能性が高い
黄色や緑色は、細菌と戦った白血球の死骸などが混じっているサインです。膿のような粘り気の強い目やにが特徴で、朝、まぶたがくっついて目が開けにくくなることもあります。主に「細菌性結膜炎」が疑われます。

2. 透明・白色で、サラサラ・水っぽい場合

→ ウイルス感染(ウイルス性結膜炎)やアレルギーの可能性
涙のようにサラサラした水様の目やにが大量に出るのが特徴です。俗に「はやり目」と呼ばれる「ウイルス性結膜炎」や、花粉症などの「アレルギー性結膜炎」の初期症状として見られます。

3. 白色で、糸を引くようにネバネバしている場合

→ アレルギー性結膜炎の可能性が高い
特に「アレルギー性結膜炎」で特徴的に見られる目やにです。強いかゆみと共に、粘り気のある白い糸を引くような目やにが出ることがあります。

4. 白〜透明で、乾くとパリパリになる場合

→ 眼瞼炎(がんけんえん)の可能性
まつ毛の生え際にある脂の腺(マイボーム腺)の炎症や詰まり(眼瞼炎)が原因で、フケのような、あるいは泡のような目やにが出ることがあります。

目やにを伴う代表的な目の病気

上記で分類した目やにの原因となる、代表的な目の病気について解説します。

細菌性結膜炎

黄色ブドウ球菌などの細菌に感染して結膜が炎症を起こす病気です。黄色くドロっとした膿性の目やに、目の充血が主な症状です。他人にうつることがあります。

ウイルス性結膜炎(はやり目)

アデノウイルスなどに感染して起こります。涙のようなサラサラした目やに、強い充血、ゴロゴロ感を伴います。感染力が非常に強く、学校では出席・出勤停止が必要となる病気です。

アレルギー性結膜炎

花粉やハウスダストなどが原因で起こります。強いかゆみが最大の特徴で、サラサラした目やにや、時に白く糸を引く目やに、充血やまぶたの腫れを伴います。他人にうつることはありません。

涙嚢炎(るいのうえん)

目頭と鼻の付け根の間にある、涙を溜める「涙嚢(るいのう)」という袋が細菌感染を起こす病気です。目頭が赤く腫れて痛むのが特徴で、その部分を押すと、目頭の涙点という小さな穴から膿のような目やにが逆流して出てくることがあります。

赤ちゃん・子供の目やにについて

赤ちゃんに目やにが多い場合、涙の通り道である「鼻涙管(びるいかん)」が生まれつき詰まっている「先天性鼻涙管閉塞症」の可能性があります。涙がうまく排出されずに目に溜まり、細菌感染を起こして目やにが出やすくなります。多くは成長と共に自然に治癒しますが、目頭のマッサージや、改善しない場合は処置が必要になることもあります。

眼科を受診すべき「目やに」のサイン

以下のような目やにが見られる場合は、治療が必要な目の病気の可能性があります。自己判断で放置せず、眼科を受診してください。

  • 目やにの色が黄色や緑色である
  • 粘り気が強く、まぶたがくっついてしまう
  • 目の充血や痛みを伴う
  • 視界がかすむ、視力が低下した感じがする
  • 症状が2〜3日以上続く、または悪化する

当院での治療

大阪市鶴見区の大阪鶴見まつやま眼科では、目やにの原因を正確に診断し、原因に応じた治療を行います。
細菌感染が原因であれば抗菌点眼薬、アレルギーが原因であれば抗アレルギー点眼薬、ウイルスが原因であれば炎症を抑える点眼薬などを処方します。
原因に合わない目薬を使っても効果がないばかりか、副作用のリスクもあるため、専門医による正しい診断が不可欠です。

まとめ:いつもと違う「目やに」は、目の異常を知らせるサイン

目やには、目の健康状態を映し出すバロメーターです。その色や粘り気、量に注意を払うことで、目の病気を早期に発見できる可能性があります。

【この記事のポイント】

  • 朝起きがけの少量の乾いた目やには正常な生理現象。
  • 黄色くネバネバした目やには細菌感染、水っぽかったり白く糸を引いたりする目やにはウイルスやアレルギーが原因のことが多い。
  • 特にウイルス性結膜炎は感染力が強く、周りの人にうつしてしまうため注意が必要。
  • 赤ちゃんに目やにが多い場合は、鼻涙管閉塞の可能性も。
  • いつもと違う目やにに気づいたら、自己判断せず眼科を受診することが最も大切。

気になる目やにの症状があれば、些細なことと思わずに、ぜひ一度当院へご相談ください。
専門医がしっかりと原因を突き止め、適切な治療を行うことで、不快な症状を速やかに改善し、あなたの目の健康を守ります。

目やに よくあるご質問(Q&A)

いつもと違う目やにが出ます。普段の目やにと病気のサインになる目やにの違いは何ですか?

朝起きた時に目のふちや目頭に少量ついている、白っぽい乾いた目やには、目の新陳代謝によって作られる生理的なもので、心配いりません。これは、涙に含まれるホコリや古い細胞、ムチンという粘液などが混ざり合ったものです。

一方、注意が必要な「病気のサイン」となる目やには、「量・色・性状(ねばつき具合)」に変化が現れます。例えば、「日中も絶えず目やにが出る」「量が多くて目が開けにくい」「黄色や緑色をしている」「ネバネバ、ドロドロしている」「白く糸を引く」といった症状です。

これらの異常な目やには、細菌やウイルスによる結膜炎、アレルギー、ものもらいなど、何らかの目のトラブルが起きている可能性を示唆しています。普段との違いに気づいたら、安易に自己判断せず、その特徴を観察して眼科医に相談することが大切です。

黄色くてネバネバした膿のような目やにがたくさん出ます。考えられる原因は何ですか?

黄色や緑色で、粘り気の強い膿のような目やには、主に「細菌感染」を疑う典型的なサインです。

黄色ブドウ球菌などの細菌が目に感染し、炎症を起こす病気で、白目の充血やまぶたの腫れを伴います。特に朝起きた時に、大量の目やにでまぶたがくっついて目が開けにくくなるのが特徴です。子どもは手で目をこすることが多いため、特に感染しやすい傾向があります。

また、まぶたの縁が赤く腫れて痛む「麦粒腫(ものもらい)」でも、原因菌の増殖によって、膿が排出されて黄色い目やにが出ることがあります。

これらの細菌感染症は、抗生物質の点眼薬による治療が非常に有効です。他の人にうつす可能性もあるため、早めに眼科を受診し、適切な治療を開始しましょう。

涙のようにサラサラした目やにが止まらないのですが、これは何ですか?

水っぽくサラサラした涙のような目やにが大量に出る場合、主に「ウイルス性結膜炎」の可能性が考えられます。代表的なものに「はやり目(流行性角結膜炎)」があり、アデノウイルスなどが原因となります。

このタイプの目やには、強い充血やゴロゴロとした異物感、まぶしさを伴うことが多く、耳の前にあるリンパ節が腫れて痛むことも特徴です。片方の目から発症し、数日後にもう片方の目にも症状が広がることがよくあります。ウイルスに対する特効薬はないため、炎症を抑える点眼薬などで症状を和らげながら、自身の免疫力で治るのを待ちます。感染力が非常に強いため、タオルを共有しないなど、家庭内・学校・職場での感染対策が必須です。

また、「アレルギー性結膜炎」でも、涙のようにサラサラした目やにが出ることがありますが、この場合は「強いかゆみ」を伴うのが大きな特徴です。

子ども(赤ちゃん)の目やにがひどいのですが、大人と原因は違いますか?

お子さんの目やにが多い場合、大人と同様に「細菌性結膜炎」や「ウイルス性結膜炎」が原因であることが多くあります。保育園や幼稚園、学校などの集団生活で感染しやすい環境にあるため、注意が必要です。

それに加え、特に生まれて間もない赤ちゃんで、常に目尻に涙がたまっていて、目やにがよく出る場合に考えられるのが「先天性鼻涙管閉塞」です。これは、目から鼻へと涙を排出する管(鼻涙管)が、生まれつき詰まっているか、狭くなっている状態です。涙がうまく排出されずに目の中に溜まり、そこに細菌が感染することで、目やにが出やすくなります。

多くは成長とともに自然に解消されますが、目やにをこまめに拭き取る清潔ケアや、涙嚢(るいのう)という部分をマッサージすることが有効な場合もあります。症状が続く場合は、眼科での治療が必要になることもあるため、一度ご相談ください。

目やにが出た時の正しい取り方や、日常生活で気をつけることはありますか?

目やにが出た際は、清潔なティッシュペーパーや、ぬるま湯に浸して絞ったコットンなどで、目頭から目尻に向かって優しく拭き取ってください。まぶたが固まって開けにくい場合は、無理に開けようとせず、濡らしたコットンなどをしばらくまぶたの上に置いて、目やにをふやかしてから優しく取り除きましょう。いずれの場合も、必ず拭き取る前に手を石鹸でよく洗うことが大切です。

日常生活で最も気をつけるべきことは、感染の拡大を防ぐことです。特にウイルス性や細菌性の結膜炎が疑われる場合は、以下の点を徹底してください。
・目を触らない、こすらない。
・手洗いをこまめに行う。
・タオル、枕カバー、寝具などを家族と共有しない。
・お風呂は最後に入るか、シャワーで済ませる。
これらの対策は、ご家族や周りの人への感染を防ぐだけでなく、反対側の目へ病気をうつさないためにも非常に重要です。

どんな目やにが出たら、眼科を受診すべきですか?受診の目安を教えてください。

生理的な少量の目やにであれば心配ありませんが、以下のような症状が見られる場合は、眼科の受診をお勧めします。これらは、治療が必要な目の病気が隠れているサインです。

  • 目やにの色が黄色や緑色である。
  • 急に目やにの量が増えた。
  • ネバネバしていて、朝、目が開けにくい。
  • 白く糸を引くような目やにが続く。
  • 目やにだけでなく、目の充血、痛み、かゆみ、腫れ、ゴロゴロ感、見えにくさなどを伴う。
  • 市販の目薬を使っても、2〜3日以上症状が改善しない。

特に、感染性の結膜炎は、放置すると症状が悪化するだけでなく、周りの人にうつしてしまうリスクがあります。ご自身の症状を正しく診断し、適切な治療を受けるためにも、「いつもと違うな」と感じたら、軽視せずに、お気軽に眼科へご相談ください。

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