「緑内障と診断され、毎日目薬を続けているけれど、眼圧がなかなか下がらない」
「たくさんの目薬を使うのが大変で、つい忘れてしまうことがある」
「視野がこれ以上悪くならないか、将来が不安…」
緑内障治療を受けている多くの患者さんが、このような悩みや不安を抱えています。緑内障は、一度失った視野を取り戻すことができないため、生涯にわたって眼圧をコントロールし、病気の進行を食い止めることが最も重要です。
その治療の選択肢として「手術」を提案されたとき、大きな不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、近年の緑内障手術は飛躍的に進歩しています。
かつての手術に比べ、患者さんの目への負担を最小限に抑え、より安全に、そして効果的に眼圧を下げる新しい選択肢が登場しています。
当院では、その最先端の治療法である「低侵襲緑内障手術(MIGS:Minimally Invasive Glaucoma Surgery)」、その中でも特に優れた実績と安全性を持つ「iStent inject W」を専門的に行っております。
この記事では、緑内障手術を検討されている患者さんに向けて、鶴見区今福鶴見の大阪鶴見まつやま眼科で行う緑内障手術「iStent inject W」について、その仕組みから手術の流れ、注意点まで、眼科専門医の立場から徹底的に解説していきます。
おさらい:なぜ緑内障に手術が必要になるのか

緑内障は、目から脳へ情報を伝える「視神経」が傷つき、見える範囲(視野)が徐々に欠けていく病気です。
その最大の原因は「眼圧(目の硬さ)」であり、治療の目的は、眼圧を安全なレベルまで下げることで、視神経へのダメージを食い止め、視野を守ることにあります。
治療の第一選択は点眼薬ですが、以下のような場合に手術が検討されます。
- 点眼薬だけでは、目標とする眼圧まで十分に下がらない場合
- 複数の点眼薬を使っていて、副作用(充血、かすみ、アレルギーなど)がつらい場合
- 点眼薬を毎日続けることが、身体的・精神的な負担になっている場合
- 視野障害の進行が速く、より確実な眼圧下降が必要な場合
手術は、点眼治療の負担を減らし、より安定した眼圧コントロールを目指すための、非常に有効な次の一手なのです。

当院の緑内障手術「iStent inject W」について
鶴見区今福鶴見の大阪鶴見まつやま眼科では、緑内障手術の「iStent inject W」を行っています。これは、従来の緑内障手術とは一線を画す、新しい概念の治療法です。
「低侵襲緑内障手術(MIGS)」という考え方
iStentは、「MIGS(Minimally Invasive Glaucoma Surgery)」と呼ばれる手術の一種です。
MIGSは、日本語で「低侵襲緑内障手術」と訳され、その名の通り、目への負担(侵襲)を最小限に抑えることをコンセプトに開発されました。
従来の手術(トラベクレクトミーなど)が、効果は高いものの合併症のリスクも比較的高いのに比べ、MIGSはより安全性が高く、回復も早いのが大きな特長です。
iStent inject Wの仕組み

iStentは、医療用チタン製の、体内に入れる医療機器としては世界最小クラスのインプラント(ステント)です。
その大きさは、わずか0.36mm。この極小の筒を、目の中の房水(眼圧の原因となる液体)の排水路である「線維柱帯」に2つ埋め込みます。

緑内障では、この線維柱帯が目詰まりを起こして房水の流れが悪くなっています。
iStentは、その目詰まりした部分をバイパスする新しい排水ルート(近道)を作ることで、房水の排出をスムーズにし、眼圧を効果的に下げるのです。
詰まった排水溝に、新しい小さなパイプを2本通して、水の流れを良くするイメージです。
iStent inject Wを選択する4つの大きなメリット
1. 非常に高い安全性
MIGSの最大のメリットは、その安全性です。手術は角膜(黒目)の非常に小さな切開創から行い、結膜(白目)を切開する必要がありません。
そのため、目へのダメージが極めて少なく、従来の手術で見られたような重篤な合併症のリスクを大幅に低減できます。
2. 早い回復と少ない制限
手術による炎症が少ないため、術後の回復が非常に早く、日常生活への復帰もスムーズです。手術後の生活制限も、従来の手術に比べて格段に少なくなります。
3. 点眼薬の負担からの解放
手術によって眼圧が安定的に下降することで、これまで毎日使用していた緑内障の点眼薬の数を減らしたり、場合によっては点眼が不要になったりする可能性があります。
これは、患者さんにとって非常に大きなメリットです。
点眼を忘れる心配や、点眼による充血・アレルギーといった副作用、そして毎月の薬剤費の負担から解放されることで、生活の質(QOL)が大きく向上します。
4. 白内障手術との同時施術が可能
iStentのもう一つの画期的な点は、白内障手術と同時に行えることです。
緑内障と白内障は、どちらも加齢と共にかかりやすくなる病気です。
白内障手術の際に作る小さな切開創から、そのままiStentを挿入することができるため、患者さんは一度の、わずか10分〜15分程度の手術で、白内障と緑内障の両方を同時に治療することが可能です。
これは、患者さんの身体的・時間的負担を大きく軽減します。
当院での手術の流れ
まず、緑内障の進行度、眼圧、目の状態などを詳細に検査し、iStent手術の適応があるかを慎重に判断します。
白内障が併存している場合は、その進行度も評価します。
医師が、iStent手術の仕組み、期待される効果、リスクや合併症の可能性について、患者さんが十分に納得されるまで詳しくご説明します。同意いただけましたら、手術日を決定します。
手術は日帰りで行います。ご来院後、体調確認を行い、手術室へ移動します。
手術は点眼麻酔で行うため、痛みはほとんどありません。
顕微鏡を使い、目の状態を確認しながらiStentを挿入します。
手術の所要時間は15分程度です。
術後は、リカバリールームで安静にしていただき、問題がなければご帰宅となります。
手術の成功には、術後のケアが非常に重要です。
感染や炎症を防ぐための点眼薬を、指示通りに必ず使用してください。
手術翌日、2日後、1週間後など、医師が指示するスケジュールに沿って定期的に受診していただき、眼圧や目の状態を慎重にチェックしていきます。
当院の緑内障手術の特徴

当院では、手術前の診察から、手術、手術後のフォローまで、院長が一貫して診させていただきます。
院長は日本眼科学会認定の眼科専門医として、長年の経験を活かし、患者さん一人ひとりに寄り添った丁寧なカウンセリングを行いながら、最適な治療法をご提案しています。
手術前から手術後のケアまで、患者さんが安心して治療に臨めるよう、医師・スタッフでサポートいたします。
いつでもお気軽にご相談ください。
正確な診断・手術を実現する充実の設備と機器
当院では、より正確に、より安全に治療を行うために、豊富な最新機器を取り揃えています。
精密な検査を行う機器・設備や手術時に活躍する機材など、大病院に引けを取らないラインナップです。
「一生に一度の手術だからこそ」、より精度の高い治療を提供しています。
お一人おひとりの症状や術式に合わせて適切に使用いたします。
丁寧なカウンセリング
当院は、単焦点眼内レンズ・多焦点眼内レンズと豊富な種類の眼内レンズを揃えています。
しかし、いざ手術を決断しても、調べれば調べるほどどんな眼内レンズを選んだらいいか分からなくなってしまった……。
そんなお困りの声をよくお聞きします。だからこそ、当院では患者さんの生活において何が重要なのかを詳しくお聞きしています。入念なカウンセリングにより患者さんが叶えたいこと、ご要望をうかがい、多数のレンズの中から最適なレンズをご提案します。
できる限り理解していただき安心できる診療を
モニターを使って検査結果をご説明し、ご自身の目の状態を一緒に確認できるため安心して治療を進めていただけます。
緑内障手術を受ける方への注意点
安心して手術を受け、良好な結果を得るために、以下の点にご留意ください。
- 手術前:常用薬(特に血液をサラサラにする薬など)がある方は、必ず事前にお申し出ください。医師の指示に従い、術前の点眼薬を忘れずに使用してください。手術当日は、ご自身での運転はできませんので、送迎の手配をお願いします。
- 手術後:術後1週間程度は、目に水や汗、ホコリなどが入らないよう、特に注意が必要です。洗顔や洗髪の方法は、具体的にお伝えします。目をこすったり、強く押さえたりすることは絶対に避けてください。就寝中は、無意識に目をこすらないよう、保護メガネを装用していただきます。
- 術後の見え方:術後しばらくは、炎症などにより視界がかすむことがありますが、時間と共に改善します。万が一、強い痛みや急激な視力低下を感じた場合は、すぐに当院までご連絡ください。
- 継続的な通院:iStent手術は、緑内障を「完治」させるものではありません。あくまで眼圧をコントロールするための治療です。手術後も、視野を守るために定期的な検査と診察を継続することが、生涯にわたって最も重要です。
まとめ:目に優しい最新手術で、未来の視野を守る
緑内障手術は、もはや「最後の手段」ではありません。
特にiStent inject Wのような低侵襲緑内障手術(MIGS)は、点眼治療の負担を減らし、より早期の段階から積極的に眼圧をコントロールするための、安全で有効な選択肢です。
「点眼治療が大変」「白内障もそろそろ気になる」…そんなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ一度、当院にご相談ください。
目の専門家として、あなたの目の状態とライフスタイルに寄り添い、未来の視野を守るための最適な治療法を一緒に考えていきましょう。
緑内障手術 よくあるご質問(Q&A)
iStent inject Wは、近年登場した新しい緑内障の治療法です。体への負担が少ない「低侵襲緑内障手術(MIGS)」の一つとして、当院でも多くの患者さんに選択されています。
ここでは、このiStentを用いた手術に関して、患者さんからよくいただくご質問とその回答をまとめました。
iStent inject Wとは、どのような手術ですか?
iStent inject Wは、眼の中の房水(ぼうすい)という水の流れを良くすることで、緑内障の進行を抑えるために重要な「眼圧」を下げる手術です。手術では、髪の毛の太さほどの、非常に小さなチタン製のステント(筒)を2本、眼の中の房水の排水溝の役割を持つ「線維柱帯(せんいちゅうたい)」という組織に埋め込みます。このステントが新たなバイパスとなり、房水の流れがスムーズになることで、眼圧が下降します。
これは「低侵襲緑内障手術(MIGS)」と呼ばれ、従来の緑内障手術に比べて眼の組織への負担が少なく、より安全性が高いのが大きな特徴です。進行してしまった緑内障を元に戻すことはできませんが、眼圧を適切にコントロールし、視野を守るための新しい選択肢です。
白内障手術と同時に行うと聞きましたが、本当ですか?
はい、その通りです。iStentを用いた手術は白内障手術と同時に行います。白内障手術では、濁った水晶体を取り除くために数ミリの小さな切開創を作りますが、iStentはその切開創から挿入できるため、緑内障手術のために新たな傷口を作る必要がありません。
そのため、患者さんの眼への負担を最小限に抑えながら、白内障と緑内障という二つの病気を一度に治療できる、非常に効率的で優れた方法です。手術時間も、白内障手術に加えて数分程度長くなるだけです。
iStent手術のメリットとデメリット(注意点)を教えてください。
最大のメリットは、眼の組織への負担が非常に少ない「低侵襲」である点です。従来の緑内障手術と比べて合併症のリスクが極めて低く、手術後の回復も早いため、患者さんの体への負担を大きく軽減できます。また、手術によって眼圧が下がることで、これまで毎日複数回点眼していた緑内障の目薬の数を減らしたり、場合によっては中止できる可能性があることも大きな利点です。
一方、デメリット(注意点)としては、iStentによる眼圧の下降効果は、従来の緑内障手術(線維柱帯切除術など)に比べると、ややマイルドである点が挙げられます。そのため、非常に高い眼圧の方や、重度の緑内障の患者さんには適さない場合があります。患者さん一人ひとりの緑内障の進行度合いに合わせて、最適な治療法を選択することが重要です。
誰でもこの手術を受けられますか?(手術の対象について)
iStent inject Wを用いた手術は、主に「軽度から中等度」の「開放隅角緑内障」の患者さんが対象となります。閉塞隅角緑内障や、非常に進行した重度の緑内障の患者さんには、別の治療法が適している場合があります。
特に、この手術の良い適応となるのは、「白内障と緑内障の両方があり、白内障手術を予定されている方」です。また、「複数の緑内障目薬を使っていて、副作用や費用、点眼の手間でお困りの方」にとっても、目薬の負担を減らすための良い選択肢となります。手術が可能かどうかは、隅角と呼ばれる眼の中の水の排水溝の状態を詳しく検査した上で、医師が総合的に判断します。ご自身が対象となるか、まずはお気軽にご相談ください。
手術後、緑内障の目薬は全く必要なくなりますか?
手術の大きな目標の一つは、緑内障の目薬(点眼薬)の負担を減らすことです。iStentによって眼圧が十分に下がれば、現在使用している目薬の種類や回数を減らせる可能性は非常に高いです。実際に、多くの患者さんが目薬の削減に成功しており、中には全ての点眼が不要になる方もいらっしゃいます。
ただし、その効果には個人差があり、全ての患者さんで点眼がゼロになることを保証するものではありません。手術前の眼圧や緑内障の進行度によって、目標とする眼圧値が異なるためです。手術後も定期的に眼圧を測定し、患者さんにとって最適な状態を維持するために、必要であれば少量の点眼を継続する場合もあります。まずは「目薬の負担を軽くする」ことを第一の目標とお考えください。
手術の費用はどのくらいですか?保険は適用されますか?
iStent inject Wを用いた緑内障手術は、健康保険が適用されます。そのため、患者さんの経済的なご負担を抑えながら、先進的な治療を受けていただくことが可能です。
手術費用は、白内障手術と緑内障手術の合計額に対して、患者さんのご年齢や所得に応じた自己負担割合(1割~3割)をかけた金額となります。また、医療費が高額になった場合に自己負担額を軽減できる「高額療養費制度」もご利用いただけます。具体的な費用については、患者さんそれぞれの保険の負担割合によって異なりますので、診察の際に詳しくご説明させていただきます。お気軽にお尋ねください。