目が痙攣する/ピクピクする

目が痙攣する/ピクピクする

「自分の意思とは関係なく、まぶたがピクピクと痙攣する」
「目の下の痙攣が、数日間ずっと続いている」
「痙攣がだんだん強くなってきた気がして不安…」

こうしたまぶたの痙攣は、多くの方が一度は経験する身近な症状です。ほとんどの場合、心配のいらない一時的なものですが、中には治療が必要な病気が隠れている可能性もゼロではありません。「ただの疲れ」と自己判断する前に、まずは痙攣の種類と原因について正しく知ることが大切です。

この記事では、目の痙攣でお悩みの患者さんに向けて、眼科専門医の立場から以下の内容を詳しく、そして分かりやすく解説していきます。

  • ほとんどの痙攣の原因である「眼瞼ミオキミア」とは?
  • 注意すべき、治療が必要な目の痙攣「片側顔面痙攣」「眼瞼痙攣」
  • 症状でわかる、危険な痙攣との見分け方(比較表あり)
  • 痙攣が起きたときの対処法と、眼科を受診すべきタイミング

この記事を最後までお読みいただくことで、ご自身の症状への不安が和らぎ、適切な対処法が明確になります。
気になる症状を放置せず、すっきり解消するための一歩としましょう。

目次

ほとんどは心配無用!目の痙攣の最も多い原因「眼瞼ミオキミア」

目が痙攣する/ピクピクする

まぶたがピクピクと痙攣する症状のほとんどは、「眼瞼ミオキミア」と呼ばれるものです。これは、まぶたを閉じる筋肉(眼輪筋)の一部が、無意識に細かく収縮を繰り返す状態で、病気というよりは一時的な筋肉の興奮状態と言えます。

眼瞼ミオキミアの症状

  • まぶたの一部(特に下まぶたが多い)が、ピクピク、プルプルと細かく震える。
  • 通常は片方の目だけに起こる。
  • 数秒から数分でおさまり、また忘れた頃に現れるのを繰り返す。
  • 自分の感覚としては気になるが、周りの人からはほとんど分からない程度の軽い痙攣。
  • 強い力で目が閉じてしまうことはない。

眼瞼ミオキミアの主な原因(誘因)

眼瞼ミオキミアは、以下のような肉体的・精神的なストレスが引き金となって起こることが多いです。

  • 疲労、睡眠不足:体が疲れていると、神経が興奮しやすくなり、誤作動を起こしやすくなります。
  • 精神的なストレス:緊張や不安、心配事なども、神経のバランスを乱す大きな要因です。
  • 眼精疲労:パソコンやスマートフォンの長時間利用で目を酷使すると、目の周りの筋肉が疲弊し、痙攣を起こしやすくなります。
  • カフェイン・アルコールの過剰摂取:コーヒーや栄養ドリンク、アルコールには神経を興奮させる作用があります。
  • ドライアイ、アレルギー:目の表面の不快感が、まばたきを不必要に増やし、筋肉の疲労につながることがあります。

対処法と経過

眼瞼ミオキミアは、ほとんどの場合、原因となっている上記の誘因を解消することで、自然に治まります。まずは十分な休息と睡眠をとり、ストレスを溜めない生活を心がけましょう。パソコン作業が多い方は、1時間に一度は休憩を挟み、意識的にまばたきをしたり、蒸しタオルで目元を温めたりするのも効果的です。通常、数日から数週間で症状は気にならなくなります。

注意が必要な、治療対象となる目の痙攣

数週間以上痙攣が続く場合や、痙攣の範囲・強さに変化が見られる場合は、眼瞼ミオキミアとは異なる、治療が必要な病気の可能性があります。

1. 片側顔面痙攣

目の周りから始まった痙攣が、次第に同じ側の頬や口元、あごへと広がっていく病気です。初期は眼瞼ミオキミアと似ていますが、以下のような違いがあります。

  • 痙攣が強く、ギュッと目が閉じてしまうことがある。
  • 口元がピクッと引きつられるなど、目の周り以外の筋肉も同時に痙攣する
  • 自然に治ることはなく、症状は徐々に悪化していく

原因の多くは、脳の奥で顔面神経が血管に圧迫されることで起こります。治療には、ボツリヌス療法(筋肉の緊張を和らげる注射)や、神経と血管を離すための脳神経外科での手術(神経血管減圧術)があります。

2. 眼瞼痙攣

こちらは、両方の目の周りの筋肉が、自分の意思とは関係なく過剰に収縮し、目が開けにくくなる病気です。脳の機能異常が原因と考えられている、ジストニアの一種です。

  • 初期症状は、まばたきが多くなる、光がまぶしい、目が乾くなど。
  • 進行すると、自分の意思で目を開けるのが困難になり、ギュッと強く目を閉じてしまう状態が頻繁に起こる。
  • 重症化すると、一時的に目が見えない状態(機能的失明)になり、歩行や読書など日常生活に大きな支障をきたす。

ドライアイと症状が似ているため、診断が遅れることも少なくありません。治療は、ボツリヌス療法が第一選択となります。

【比較表】あなたの痙攣はどのタイプ?

3つの痙攣の主な違いを、以下の表にまとめました。

スクロールできます
眼瞼ミオキミア片側顔面痙攣眼瞼痙攣
場所片方のまぶたの一部顔の片側全体
(目、頬、口)
両方の目の周り
強さピクピクする軽い痙攣ギュッと目が閉じる
強い痙攣
目が開けられないほど
強い痙攣
経過数日〜数週間で
自然に治まる
自然には治らず
徐々に悪化
自然には治らず
徐々に悪化

眼科を受診すべきタイミング

ほとんどは心配のない眼瞼ミオキミアですが、以下のような症状が見られる場合は、他の病気の可能性を鑑別する必要があります。我慢したり、様子を見続けたりせず、一度眼科を受診してください。

  • 痙攣が数週間以上、毎日続いている
  • 痙攣の範囲が、目の周りから頬や口元にも広がってきた
  • 痙攣が強く、完全に目が閉じてしまうことがある
  • 左右両方のまぶたが同時に痙攣する
  • 痙攣だけでなく、目の充血、痛み、腫れ、目やになど、他の症状も伴う
  • まばたきが多く、目が開けにくく感じる

当院での診断と治療

鶴見区今福鶴見の大阪鶴見まつやま眼科では、まず痙攣の性状を詳しく問診し、診察することで、ほとんどの場合どのタイプの痙攣かを診断することができます。
片側顔面痙攣が疑われる場合は、原因を特定するために脳のMRI検査などが必要となるため、脳神経外科と連携して治療を進めます。眼瞼痙攣と診断された場合は、ボツリヌス療法の適応についてご説明します。

まとめ:長引く目の痙攣は、我慢せず専門医にご相談を

目の痙攣は、多くが「少し休んで」という体からのサインです。まずは生活習慣を見直すことが大切です。

【この記事のポイント】

  • まぶたがピクピクする痙攣のほとんどは、疲れやストレスが原因の「眼瞼ミオキミア」で、自然に治まる。
  • 痙攣が頬や口元に広がる(片側顔面痙攣)、または両目に起こり目が開けにくい(眼瞼痙攣)場合は、治療が必要な病気のサイン。
  • 痙攣が数週間以上続く場合は、一度眼科で原因を調べることが推奨される。
  • 正しい診断が、適切な治療への第一歩。

しかし、その背後に病気が隠れている可能性も忘れてはなりません。特に、痙攣が長引いたり、範囲が広がったり、強くなったりする場合は、放置せずに必ず専門医の診察を受けてください。
当院では、患者さんの症状を丁寧に診察し、適切な診断と治療方針をご提案いたします。どうぞお気軽にご相談ください。

目が痙攣する/ピクピクする よくあるご質問(Q&A)

「最近、まぶたが自分の意思とは関係なくピクピクと動く」「目の下が痙攣して気になる」…。このような症状でご相談に来られる患者さんは、実は非常に多くいらっしゃいます。
ほとんどの場合は心配いらない一過性のものですが、中には注意が必要な病気が隠れていることも。
ここでは、目の痙攣に関して患者さんからよくいただくご質問とその回答をまとめました。

なぜ、まぶたはピクピクと痙攣するのですか?主な原因は何ですか?

まぶたがピクピクと痙攣する症状のほとんどは、「眼瞼ミオキミア」と呼ばれる状態です。これは、まぶたの筋肉(眼輪筋)が、自分の意思とは無関係に細かく収縮を繰り返すもので、病気というよりは筋肉の「こむら返り」のようなものと考えてよいでしょう。

その主な引き金となるのは、心身の疲労です。具体的には、パソコンやスマートフォンなどの長時間使用による目の疲れ(眼精疲労)、睡眠不足、精神的なストレスなどが挙げられます。また、コーヒーや栄養ドリンクなどに含まれるカフェインの過剰摂取や、アルコール、ドライアイなども、筋肉の異常な興奮を招き、痙攣を誘発する原因となることがあります。多くの場合、これらの誘因がいくつか重なったときに症状が現れやすくなります。

痙攣を自分で治す方法はありますか?何か対策はできますか?

まぶたの痙攣は、その原因となる生活習慣を見直すことが、最も効果的な対策・治療法となります。まずは、ご自身の生活を振り返ってみましょう。

十分な睡眠時間を確保し、心と体をゆっくり休ませることが第一です。パソコン作業などが多い方は、1時間に1回は休憩を挟み、遠くの景色を見たり、意識的にまばたきをしたりして、目をリラックスさせてください。また、カフェインやアルコールの摂取を控えることも有効です。目の周りを蒸しタオルなどで温め、血行を促進することも、筋肉の緊張を和らげるのに役立ちます。ドライアイが気になる方は、人工涙液タイプの目薬を使用するのもよいでしょう。まずは生活習慣の改善を試みることが、症状を和らげるための近道です。

この痙攣は、どのくらいの期間続くのでしょうか?止まらない場合は?

ほとんどの良性のまぶたの痙攣(眼瞼ミオキミア)は、一時的なものです。数日間で自然に治まることもあれば、数週間にわたって症状が出たり治まったりを繰り返すこともあります。多くは、原因となっている疲労やストレスが解消されるにつれて、自然と頻度が減り、いつの間にか気にならなくなります。

ただし、「数週間以上、ほとんど毎日痙攣が続いている」「ピクピクする動きがだんだん強くなってきた」「痙攣の範囲が広がってきた」というように、症状が長く続いたり、悪化したりする場合には、単なる疲れ目ではない可能性も考えられます。症状が長引いてご自身で不快に感じる、あるいはご不安に思われる場合は、一度眼科にご相談いただくことをお勧めします。

症状が続く場合、病院に行くべきですか?何科を受診すれば良いですか?

ほとんどは心配いらない症状ですが、以下のようなサインが見られる場合は、他の病気の可能性も考えられるため、一度医療機関の受診をお勧めします。

  • 痙攣が数週間以上、頻繁に続く場合
  • 痙攣が強く、まぶたが完全に閉じてしまうことがある場合
  • まぶただけでなく、頬や口元など、顔の他の部分も一緒に痙攣する場合
  • 目の充血や痛み、腫れ、めやになど、他の症状を伴う場合
  • 物が二重に見える、視力が落ちてきたなど、見え方にも異常がある場合

このような症状がある場合、まずは「眼科」にご相談ください。目の状態を詳しく診察し、原因を特定します。脳神経系の病気が疑われるなど、より専門的な検査や治療が必要と判断した場合は、責任をもって適切な専門医(脳神経内科や脳神経外科など)にご紹介します。

ただの疲れ目だと思っていましたが、何か怖い病気の可能性はありますか?

患者さんがご心配されるのも無理はありません。実際に、まぶたの痙攣が、他の病気の一症状として現れることも稀にあります。ただし、その頻度は非常に低く、ほとんどのケースは前述した良性の「眼瞼ミオキミア」ですので、過度に心配しすぎる必要はありません。

注意すべき病気としては、次に解説する「眼瞼痙攣」や「片側顔面痙攣」のほか、非常に稀ですが、脳腫瘍や多発性硬化症といった脳神経系の病気が原因となることもあります。これらの病気の場合、まぶたの痙攣以外にも、顔の他の部分の動きや感覚の異常、視力障害など、別の症状を伴うことがほとんどです。眼科医は、診察の際にそれらの兆候がないかを注意深く確認し、怖い病気を見逃さないように努めますので、ご安心ください。

「眼瞼痙攣」や「片側顔面痙攣」という病名も聞きますが、違いは何ですか?

これらは、単純な疲れ目による「眼瞼ミオキミア」とは異なる、治療が必要な病気です。

「眼瞼痙攣」は、目の周りの筋肉(眼輪筋)が必要以上に緊張し、自分の意思とは関係なく、両目がぎゅっと閉じてしまう病気です。初期はまばたきが増える程度の症状ですが、進行すると目を開けているのが困難になり、歩行や運転に支障をきたすこともあります。原因は脳の機能異常と考えられています。

「片側顔面痙攣」は、顔の片側の筋肉(まぶた、頬、口元など)が、同時にピクピクと痙攣する病気です。多くは、顔面神経が脳の血管によって圧迫されることが原因で起こります。

これらの病気は、疲れ目による痙攣と異なり、自然に治ることはありません。ボツリヌス毒素の注射など、専門的な治療が必要となります。当院では、これらの病気の鑑別診断も行っています。

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