「パソコン作業が続くと、目の奥からこめかみにかけてズーンと重い頭痛がする」
「夕方になると、ひどい肩こりと共に頭痛に悩まされる」
「鎮痛薬を飲んでも、なかなか頭痛がすっきりしない」
このような、つらく慢性的な頭痛にお悩みではありませんか?
その原因不明の頭痛、もしかしたら「目」に根本的な原因が隠れているかもしれません。
実際に、頭痛で悩んでいる方の多くに、目に何らかの問題が見つかることは決して珍しくありません。
目と脳は視神経という太い神経で直接つながっており、相互に密接な関係にあります。
そのため、目に過度な負担がかかったり、目に病気があったりすると、そのサインとして頭痛が現れることがあるのです。
この記事では、頭痛と目の関係について不安を感じている患者さんに向けて、眼科専門医の立場から以下の内容を詳しく、そして分かりやすく解説していきます。
- 最も多い原因、「眼精疲労」による頭痛のメカニズム
- 見逃されがちな、頭痛を引き起こす目の状態(遠視・乱視・老眼・斜位など)
- 頭痛を伴う、緊急性の高い危険な目の病気
- 眼科で行う検査と、頭痛を解消するための治療法
この記事を最後までお読みいただくことで、ご自身の頭痛の原因を考えるヒントが得られ、つらい症状から解放されるための適切な一歩を踏み出すことができます。
頭痛の最大の原因は「眼精疲労」|無理なピント調節が引き起こす

目と関連する頭痛の中で、最も多く見られる原因が「眼精疲労」です。単なる「目の疲れ(疲れ目)」とは異なり、眼精疲労は、休息や睡眠をとっても目の痛みやかすみ、頭痛といった症状が回復しない状態を指し、時には吐き気や肩こりなども伴います。
この眼精疲労を引き起こす最大の要因は、「無理なピント調節」です。
私たちは物を見るとき、目の中のレンズである「水晶体」の厚みを「毛様体筋」という筋肉で変化させて、ピントを合わせています。この毛様体筋に過度な負担がかかり続けることで、筋肉が凝り固まり、目の周りの血流が悪化。これが目の痛みや、自律神経の乱れを介して頭痛、肩こり、吐き気などを引き起こすのです。
無理なピント調節を強いる、隠れた目の状態
では、なぜ無理なピント調節が必要になってしまうのでしょうか。それには、以下のようなご自身では気づきにくい目の状態が関係しています。
- 遠視:「遠くがよく見える目」と思われがちですが、実は遠くを見るときも近くを見るときも、常に毛様体筋を頑張らせてピントを合わせている目です。本人は無意識でも、目は常に緊張状態にあるため、眼精疲労や頭痛を非常に起こしやすいです。
- 乱視:角膜の歪みによって、ピントが一点に合わない状態です。脳がなんとか鮮明な像を得ようと、常に目が無理をするため、頭痛の原因となります。
- 老眼・老視:加齢により水晶体が硬くなり、ピント調節機能が衰えた状態です。特に初期の老眼では、見えにくい手元を無理に見ようと目を酷使するため、ひどい頭痛や疲労感を感じやすくなります。
- 斜位):両目の視線が、わずかに内外や上下にずれている状態です。普段は脳の働きで一つの像にまとめていますが、そのための努力が常に必要となるため、眼精疲労や頭痛の原因となります。
- 合わないメガネ・コンタクトレンズ:度数が強すぎたり弱すぎたりするメガネやコンタクトレンズを使い続けることは、目に無理な緊張を強いる最大の原因の一つです。
生活環境による眼精疲労(VDT症候群)
パソコンやスマートフォンなどのデジタル端末(VDT)を長時間使用することも、眼精疲労による頭痛の大きな原因です。画面に集中するとまばたきの回数が減って目が乾燥したり、同じ距離を凝視し続けることで毛様体筋が凝り固まったりします。これが、いわゆる「VDT症候群」や「テクノストレス眼症」と呼ばれる状態です。
【要注意】頭痛を伴う、危険な目の病気
ほとんどの目の関連痛は眼精疲労によるものですが、中には失明につながる危険な目の病気の一症状として、頭痛が現れることがあります。
【緊急性が最も高い】急性緑内障発作
これは、何らかの原因で目の中の房水(液体)の流れが滞り、眼圧(目の硬さ)が急激に危険なレベルまで上昇する、眼科領域で最も緊急性の高い病気の一つです。放置すれば、数時間で失明に至る可能性があります。
以下のような症状が特徴で、脳の病気と間違われることもあります。
- これまで経験したことのないような、激しい目の痛みと頭痛(特に片側)
- 吐き気や嘔吐
- 急激な視力低下、かすみ
このような症状が突然現れた場合は、迷わず、夜間や休日であっても救急外来を受診してください。
ぶどう膜炎・視神経炎など
目の中に炎症が起こる「ぶどう膜炎」や、視神経に炎症が起こる「視神経炎」でも、目の奥の痛みや頭痛を伴うことがあります。これらの病気も、早期に適切な治療を開始しないと、視力に後遺症が残る可能性があるため、注意が必要です。

その頭痛、目からかも?見分けるヒント
全ての頭痛が目から来るわけではありません。以下のような特徴がある場合、目が原因である可能性を考えてみましょう。
- 頭痛が、目の奥やこめかみ、おでこのあたりを中心に起こる。
- パソコン作業や読書、運転など、目を集中して使った後に頭痛がひどくなる。
- 目の疲れやかすみ、まぶしさ、充血などの目の症状を伴う。
- 夕方になると症状が悪化する
もちろん、片頭痛や緊張型頭痛といった脳神経内科領域の頭痛と合併していることも多いため、自己判断は禁物です。
原因を突き止める、当院での検査
鶴見区今福鶴見の大阪鶴見まつやま眼科では、頭痛の原因が目にあるかどうかを調べるために、以下のような専門的な検査を行います。
- 屈折検査:遠視、近視、乱視の有無と程度を正確に測定します。
- 両眼視機能検査:斜位など、両目のチームワークに問題がないかを調べます。
- 調節機能検査:ピント調節能力を測定し、老眼の程度や目の緊張状態を評価します。
- 眼圧検査・眼底検査・視野検査:緑内障や、その他の目の奥の病気がないかを徹底的に調べます。
治療法について
検査で原因が特定されれば、その原因に応じた治療を行います。遠視や乱視、老眼が原因であれば、ご自身の目に正確に合ったメガネやコンタクトレンズを装用するだけで、長年の頭痛が嘘のように解消されるケースが非常に多くあります。
また、眼精疲労に対しては、目の緊張を和らげる点眼薬を処方することもあります。急性緑内障発作などの病気が見つかった場合は、迅速に専門的な治療を開始します。
まとめ:鎮痛薬を飲む前に、一度「目」の検査を
つらい頭痛に悩まされている時、つい手軽な鎮痛薬に頼ってしまう方は多いでしょう。しかし、それは一時的に症状を抑えているだけで、根本的な解決にはなっていません。
【この記事のポイント】
- 長引く頭痛や肩こりの原因が、目に隠れていることは非常に多い。
- 最大の原因は、遠視・乱視・老眼など、自分では気づきにくい目の状態による「眼精疲労」。
- 正確なメガネやコンタクトレンズを作るだけで、頭痛が劇的に改善することがある。
- まれに、急性緑内障発作などの危険な病気のサインであることも。
- 原因不明の頭痛に悩んでいたら、まずは眼科で精密検査を受けることが解決への近道。
もしあなたが原因のはっきりしない頭痛に長年悩まされているなら、一度、視点を変えて「目」を疑ってみてください。
当院では、患者さんの症状を丁寧に伺い、頭痛の根本原因となりうる目の問題を徹底的にお調べします。
つらい日々から解放されるために、ぜひ一度ご相談ください。