「朝起きたら、白目がゼリーのようにぶよぶよに腫れていて驚いた」
「目がかゆくてこすっていたら、白目が水ぶくれのようになった」
「コンタクトを外したら、白目がはみ出すように盛り上がっている」
このような、白目が突然ぶよぶよと腫れあがる症状を経験し、大変驚いてこのページをご覧になっている方もいらっしゃることでしょう。見た目が非常に派手なため、何か大変な病気ではないかと、強い不安を感じてしまいますよね。
この症状は、「結膜浮腫」と呼ばれる状態です。ご安心ください。多くの場合、その原因は強いアレルギー反応によるもので、見た目のインパクトほど緊急性が高いわけではなく、適切な治療で綺麗に治ることがほとんどです。
しかし、だからといって放置して良いわけではありません。原因を特定し、つらい症状を速やかに和らげるためには、眼科での診断が不可欠です。
この記事では、白目の腫れでお悩みの患者さんに向けて、眼科専門医の立場から以下の内容を詳しく、そして分かりやすく解説していきます。
- 「白目がぶよぶよ」になる正体、「結膜浮腫」とは?
- 最も多い原因である「アレルギー」との関係
- 症状が出てしまった時の、家庭でできる応急処置と「絶対にやってはいけないこと」
- 眼科で行われる検査と、効果的な治療法
この記事を最後までお読みいただくことで、突然の症状への不安が和らぎ、冷静に、そして正しく対処するための知識が身につきます。
症状の正体は「結膜浮腫(けつまくふしゅ)」

白目がぶよぶよ、ゼリー状になる症状の正体は、「結膜浮腫」です。これは、白目の表面を覆っている透明な膜である「結膜」が、何らかの原因で強い炎症を起こし、結膜の下に水分(リンパ液)が溜まってむくんでしまった状態です。
皮膚にできる「水ぶくれ」や「むくみ」が、白目の表面で起こっているとイメージしていただくと分かりやすいでしょう。結膜は、まぶたの裏側で袋状につながっているため、どれだけむくんでも眼球の外にこぼれ落ちるようなことはありません。
この結膜浮腫は、それ自体が病名というよりは、何らかの病気によって引き起こされる「症状」の一つです。
結膜浮腫の最も多い原因は「アレルギー」
結膜浮腫を引き起こす原因として、最も頻度が高いものは「アレルギー性結膜炎」、特にその急性症状です。
強いアレルギー反応のメカニズム
花粉(スギ、ヒノキなど)、ハウスダスト、動物の毛といったアレルギーの原因物質(アレルゲン)が目に入ると、体はそれを異物と認識し、追い出そうとします。その際、結膜にあるマスト細胞という細胞から、「ヒスタミン」などの化学伝達物質が大量に放出されます。
このヒスタミンには、血管を拡張させ、血管の壁のすき間を広げる作用があります。その結果、血管から血液の液体成分が結膜の組織に漏れ出し、強いかゆみと共に、急激なむくみ(浮腫)、すなわち結膜浮腫を引き起こすのです。
最大の誘因は「目をこすること」
アレルギー性結膜炎による結膜浮腫は、特に「目のかゆみを我慢できずに、強くこすってしまった」時に起こりやすいのが特徴です。目をこする物理的な刺激が、マスト細胞をさらに活性化させ、ヒスタミンの放出を増大させてしまうため、炎症が一気に悪化し、 dramaticな腫れにつながるのです。
特に、お子さんはかゆみを我慢することが難しいため、目をこすった後に白目がぶよぶよになってしまい、保護者の方が驚いて駆け込んでくる、というケースが非常に多く見られます。
その他の原因
アレルギー以外にも、以下のような原因で結膜浮腫が起こることがあります。
- 感染症:ウイルスや細菌による重症の結膜炎(特にアデノウイルスなど)。
- 物理的な刺激:目を強くぶつけた(外傷)、目に異物が入った、目の手術後など。
- 薬剤性:使用している点眼薬が合わない場合。
- 全身性の病気:非常にまれですが、甲状腺眼症や腎臓の病気、心不全、重いアレルギー反応であるアナフィラキシーの一症状として現れることもあります。
「白目がぶよぶよ」になった時の応急処置
突然症状が現れた場合、パニックにならずに、まずはご家庭でできる応急処置を行いましょう。
まず、絶対にやってはいけないこと
- 目をこする、触る:絶対にやめてください。症状を悪化させる最大の原因です。かゆみが強くても、ぐっと我慢しましょう。
- 目を洗う:水道水で目を洗うと、涙のバリア機能を壊したり、角膜を傷つけたりする可能性があるため、推奨されません。
推奨される応急処置
- アレルゲンを洗い流す:もし手元にあれば、防腐剤の入っていない人工涙液を多めに点眼し、目の中に入ったアレルゲンを洗い流します。
- 冷やす:清潔なタオルやガーゼで包んだ保冷剤、あるいは水で濡らして固く絞ったタオルなどを、閉じたまぶたの上から優しく当てて冷やします。冷やすことで血管が収縮し、炎症やかゆみ、腫れを和らげる効果があります。
- コンタクトレンズを外す:コンタクトレンズを装用している場合は、すぐに外してください。
- 安静にする:体を休め、アレルゲンが多そうな場所(屋外やほこりっぽい部屋など)から離れましょう。
これらの処置は、あくまで一時的に症状を和らげるためのものです。原因を特定し、適切な治療を受けるために、症状が少し落ち着いたら必ず眼科を受診してください。
当院での診断と治療
大阪市鶴見区の大阪鶴見まつやま眼科では、まず問診でアレルギーの有無や症状が出た時の状況などを詳しくお伺いし、細隙灯顕微鏡という機械で目の状態を詳細に観察します。
原因がアレルギー性結膜炎であると診断された場合、治療は点眼薬が中心となります。
- 抗アレルギー点眼薬:かゆみの原因となるヒスタミンの働きをブロックする「抗ヒスタミン薬」や、ヒスタミンなどを放出するマスト細胞の働きを安定させる「メディエーター遊離抑制薬」を使用します。
- ステロイド点眼薬:結膜浮腫のように炎症や腫れが非常に強い場合には、炎症を強力に抑えるために、ステロイドの点眼薬を短期間使用します。ステロイド点眼薬は効果が高い反面、副作用のリスクもあるため、必ず眼科医の指導のもとで正しく使用する必要があります。
適切な治療を行えば、通常、強い腫れは数時間から1〜2日程度で引き、かゆみなどの症状も数日間で改善していきます。
まとめ:驚きの症状も、原因がわかれば怖くない
白目がぶよぶよとゼリー状に腫れる「結膜浮腫」は、見た目のインパクトが非常に強く、誰もが不安になる症状です。
【この記事のポイント】
- 白目がぶよぶよになる正体は、結膜に水分が溜まった「結膜浮腫」という状態。
- 原因のほとんどは、花粉症などの強いアレルギー反応。
- かゆくても絶対に目をこすらないことが、悪化させない最大のポイント。
- まずは冷やして安静にし、症状が落ち着いたら必ず眼科を受診する。
- 適切な点眼治療で、速やかにきれいに治すことができる。
自己判断で市販のアレルギー用目薬を使い続けると、症状が長引いたり、他の原因を見逃したりする可能性があります。
特に、アレルギー以外の原因も考えられるため、一度は専門医の診察を受けることが非常に重要です。
突然の症状に驚かれたことと思いますが、どうぞ慌てずに当院へご相談ください。
白目がぶよぶよする よくあるご質問(Q&A)
白目が突然ゼリーのようにぶよぶよになりました。これは何かの病気ですか?
その症状は「結膜浮腫」と呼ばれる状態である可能性が非常に高いです。白目(結膜)に水分が溜まり、ゼリー状にむくんで(腫れて)しまうもので、多くは「アレルギー性結膜炎」の症状の一つとして現れます。
花粉やハウスダストなどのアレルゲンが目に入ることで、結膜にある細胞からヒスタミンというかゆみの原因物質が放出されます。このヒスタミンの働きで血管から水分が漏れ出し、白目がぶよぶよと腫れ上がってしまうのです。見た目のインパクトが強く、非常に驚かれると思いますが、多くの場合、強いかゆみや充血、涙目を伴います。
視力に直接影響することは稀ですが、重度の場合や他の病気が隠れている可能性もゼロではありません。特に、痛みや急な視力低下を伴う場合は、別の原因も考えられるため、自己判断せずに眼科を受診することが大切です。
なぜ白目がぶよぶよに腫れてしまうのでしょうか?原因を教えてください。
白目がぶよぶよに腫れる「結膜浮腫」の最も一般的な原因は、アレルギー反応です。私たちの体には、異物(アレルゲン)が侵入した際に、それを排出しようとする免疫機能が備わっています。
目におけるアレルギー反応の主役は「マスト細胞」です。花粉(スギ、ヒノキなど)、ハウスダスト、ダニ、ペットの毛といったアレルゲンが結膜に付着すると、マスト細胞がそれを感知し、ヒスタミンなどの化学伝達物質を大量に放出します。このヒスタミンが、結膜の血管を広げ、血管の壁のすき間を緩める作用を持っています。その結果、血液中の水分(血漿成分)が血管の外に漏れ出し、結膜の下に溜まってしまうことで、白目が水ぶくれのようにぶよぶよと腫れるのです。
特に、目をこすることでマスト細胞が物理的に刺激され、さらに多くのヒスタミンが放出されるため、症状が一気に悪化することがあります。
白目がぶよぶよになった時、自分でできる応急処置はありますか?目をこすっても大丈夫ですか?
まず、最も重要なことは「目をこすらない」ことです。強いかゆみを伴うため、無意識にこすってしまいがちですが、こする刺激はアレルギー反応を悪化させ、症状をさらにひどくする原因になります。
ご自身でできる応急処置としては、まずアレルゲンを洗い流す目的で、防腐剤の入っていない人工涙液などを多めに点眼して、そっとあふれさせるのが良いでしょう。その後、清潔なタオルやガーゼで包んだ保冷剤などで、まぶたの上から優しく冷やすと、血管が収縮してかゆみや腫れが和らぐことがあります。
市販の目薬を使用する場合は、アレルギー用のものを選ぶのが基本ですが、症状が強い場合や、どの目薬が合うか分からない場合は、自己判断での使用は控えめにし、できるだけ早く眼科を受診することをお勧めします。コンタクトレンズを使用している方は、外してください。
この白目のぶよぶよは、放っておいても自然に治りますか?どのくらいで元に戻りますか?
症状の程度にもよりますが、アレルギーの原因物質(アレルゲン)から離れ、目をこすらないように気をつけていれば、軽度の結膜浮腫は数時間から半日ほどで自然に軽快することもあります。体内に放出されたヒスタミンが分解・吸収され、漏れ出た水分が徐々に排出されることで、腫れは引いていきます。
しかし、症状が強く出ている場合や、アレルゲンが除去できない環境にいる場合は、自然に治るまでに1〜2日以上かかったり、いったん治まっても再発を繰り返したりすることがあります。
眼科で処方される抗アレルギー点眼薬などを使用すれば、ヒスタミンの働きを直接抑えることができるため、より速やかに症状を改善させることが可能です。症状が長引く場合や、日常生活に支障が出るほどの強いかゆみや腫れがある場合は、放置せずに眼科を受診し、適切な治療を受けることを強くお勧めします。
眼科では、どのような検査や治療をするのですか?
眼科を受診された場合、まずは患者さんから症状(いつから、どんな状況で、かゆみの程度など)を詳しく伺います。その後、「細隙灯顕微鏡」という機器を使って、目の状態を詳しく観察します。この検査で、結膜浮腫の程度やアレルギー性結膜炎に特徴的な所見(まぶたの裏のぶつぶつなど)を確認し、診断を確定します。
治療は、主に点眼薬による薬物療法が中心となります。処方されるのは、アレルギー反応を引き起こすヒスタミンの働きをブロックする「抗ヒスタミン薬」や、マスト細胞から化学伝達物質が放出されるのを抑える「メディエーター遊離抑制薬」といった種類の抗アレルギー点眼薬です。
かゆみや腫れが非常に強い最重症のケースでは、炎症を強力に抑えるために、ごく短期間だけ「ステロイド点眼薬」を併用することもあります。
アレルギーが原因なら、白目がぶよぶよになるのを予防する方法はありますか?
はい、予防のためにできることはいくつかあります。まず基本となるのは、原因となるアレルゲンをできるだけ目に入れない、避ける「セルフケア」です。
花粉が原因の場合は、花粉の飛散が多い時期の外出時には、ゴーグル型のメガネや花粉対策用のメガネを着用するのが非常に効果的です。帰宅時には、玄関前で衣服についた花粉をよく払い、洗顔やシャワーで顔や髪についた花粉を洗い流しましょう。
ハウスダストやダニが原因の場合は、こまめな掃除や換気、寝具の洗濯や布団乾燥機の使用が有効です。また、空気清浄機を活用するのも良いでしょう。
さらに、花粉症のように症状が出る時期が予測できる場合は、「初期療法」が非常に効果的です。これは、症状が出始める約2週間前から、抗アレルギー点眼薬の使用を開始する方法です。シーズン中の症状を軽くしたり、症状が出る期間を短くしたりする効果が期待できますので、毎年症状に悩まされる方は、早めに眼科医に相談してください。

